竹宮ゆゆこ総合スレ SS補間庫
   

 

その後のとらドラ

「大河、好きだっ!」

 3年の卒業式後、竜児と大河は1年振りの再会をした。
 これはその、1年後の話。

 「高須竜児、汝は逢坂大河を妻とし、生涯愛しみ合う事を誓いますか?

 「誓います」

 「逢坂大河、汝は高須竜児を夫とし、生涯支え合う事を誓いますか?」

 「はい、誓います」

 そう、今行われている事は婚姻の儀式。竜児と大河の結婚式である。
 この一年、色んなことがあった。

 高校を卒業し、久々の再開をした竜児と大河。

 「大河、もう絶対お前を離したりしないからな」

 「…駄犬の癖に生意気よ、でも私も離したりしない」

 卒業式後、竜児の家で再度約束を交し合い、そして唇を交し合った。
 「…んっ」

 「あらあらぁ、やっちゃん焼けちゃうわぁ」

 「!!」

 「泰子!いつの間に!」

 ジャストタイミングで泰子登場。竜児の母にして、見た目と頭脳は独神(恋ヶ窪ゆり先生31歳)
 に引けをとらないくらい若いパワフルかーちゃんである。

 「…帰ってきたらただいまくらい言えよな」

 竜児は顔を赤らめた。それはもうヤカンが沸騰するくらい赤くなっていた。
 泰子は不思議そうに

 「あらぁ?言ったわよぉ?」

 この台詞。相変わらずの天然だ。

 「やっちゃん、ただいま!」

 大河は泰子に抱きついた。

 「大河ちゃんおかえり♪」

 「やっちゃん…く、くるしいぃ…」

 「あらやだぁ、ごめんねぇ」

 泰子の豊満な胸に窒息しそうになる大河。
 …これでまた以前のような暮らしが戻ってくるのか。
 …でもまたこいつのことだから食い散らかしたり、身の回りの世話もしなくちゃいけないのだろうか。
 竜児の顔色を喜怒哀楽で現すのであれば、喜→哀→喜→哀→…と変わっていく。

 「りゅーちゃん、変な顔になってるぅ」

 「…相変わらずキモいわね」

 「キモいとか言うな!それに俺の顔は変じゃねぇ!」

 「三白眼の癖に?」

 「うっ…それは言わないでくれ…」

 竜児は思わず涙目になった。それでも本当に落ち込んでいるわけではない。
 相も変わらずの減らず口。どぎつい性格。変わってないな…
 竜児の目が怪しく光る。このまま人を殺すのではないかという目つきに変わってくる。
 でも嬉しいのだ。竜児にとってかけがえのない人との他愛もない会話。
 この一年、どれだけ長かった事か。
 大河が居なくなったあの日から、この日をどれだけ待ち焦がれていたか。
 竜児は嬉しいような恥ずかしいような、そんなキモチでいっぱいになり前髪を触っていた。

 「と、とりあえず、飯でも作るか」

 「さんせーい♪」

 「私、トンカツが食べたい」

 「はいはい、分かりました」
 竜児はキッチンに向かう。
 冷凍庫にあるトンカツ用の肉を取り出す。だからといって衣が最初から着いている揚げるだけのではなく
 ステーキサイズの肉を凍らせてあるだけの物。
 その肉をレンジで解凍する。
 解凍している間に付け合せのサラダ、皿の上に肉しかないのは寂しいのでニンジンのグラッセとインゲンを軽く塩コショウで炒める。
 解凍が完了したら、今度は卵を掻き混ぜ、パン粉を取り出す。
 一度肉を軽く焼き、その後卵につけ、パン粉を塗して揚げれば完成である。

 「いただきまーす」

 「はいはい、召し上がれ」

 大河が自分の料理を食べている。
 本当に戻ってきたんだと再実感する竜児。
 大河を見ていて思っていた。
 すると

 「変わってない…竜児の味だ…」

 大河の頬から流れる一条の涙。

 「おう!?どうした?」

 「この一年…寂しかった…」

 「大河…俺もだ…」

 抱きしめあう二人。
 大河が大丈夫なのであればいつでも会いに行けた。
 それでも一度決めたら動かない大河の性格は、どうにも卒業するまで我慢しなければ気がすまなかったのだ。
 どれだけ会いたかったのだろう。
 どれほどの寂しさを費やしていたのだろう。
 でもそれは竜児とて同じ事であった。
 大河の事を理解していたから。
 だからこそどこにいるか、どこに住んでいるか聞かなかった。
 大河は竜児を信じている。だからこそ竜児も大河を信じ、1年待っていたのだ。
 互いを抱きしめあう力が強くなり…

 「キッ…キッ…キスシチャイナヨ!」

 「!!」

 インコちゃんからの煽りを受ける。

 「なっ…なんって事を言うの!この不細鳥!」

 大河の睨みにインコちゃんの羽がどんどん無くなって行く。

 「た、大河!お前またインコちゃんを不細工にするつもりか!」

 気づいたときには足の付け根くらいまでしか羽が残っていなかった。
 「あぁ…インコちゃんがぁ…」

 涙目になる竜児。

 「ア…アバ…アバババ…」

 インコちゃんの羽が元に戻ったのは1ヵ月後であった。

 続く