竹宮ゆゆこ総合スレ SS補間庫
   

 

 高須棒姉妹


昼食どき、2年C組の教室でのんびりお弁当している生徒たち。
竜児はいつものメンツ、大河、能登、春田たちと一緒に弁当を食べていた。
話の都合上いきなりで恐縮だが、やきそばパンをもそもそ齧りながら春田がかました。

「あ〜あ、亜美ちゃんと麻耶ちゃんと奈々子様と4Pできたら、俺死んでもいい〜」

『ぶっ!!』
すこしはなれたところで机をつき合わせてお弁当していた当の本人たち、2年C組の花の美少女トリオである
川嶋亜美、木原麻耶、香椎奈々子の三人がそろって吹き出した。

「春田お前バカじゃないのか」能登が心底あきれた様子で頭を抱える。
ソープへ行け、アホエロロン毛」弁当をつつきながら大河がいつもの台詞で流す。

「ちょっと春田、あったまおかしいんじゃね?」

春田のアブナい発言に、つり目がちの大きな瞳をさらにつり上げて、木原麻耶が竜児たちのほうを見やる。
「あ〜、すまん木原それと亜美ちゃんと奈香椎さんも」能登が美少女三人組に向かって頭をさげる。
「なんで能登ちんがあやまんのよ」ぷりぷり怒る麻耶ちゃんだが、あまり迫力が無いというか、はた目には逆に可愛らしい。
その後ろで、亜美は知らん顔。奈々子はにこにこ笑ってこちらに手を振っている。
「お〜奈々子様、いまの受けたぁ〜?」相手に受けたと勘違いしてニヤける春田。
「うふふっ、さあね〜」と奈々子。
「受けてねーよ!」と麻耶。やおら上履きを脱ぎ、投擲体勢に入る。
「麻耶ったら、相手しないの」と亜美。
「モルグモルグ木原さーん、あとでシメとくからねーこいつ」食事中に巻き添えを喰らうのは避けたい大河が紛争介入を宣言。

ねーねー高須君、春田君たら、けしからないと思わない?」上履きを戻した麻耶がよくわからない問いかけをする。
履くときにちょっとだけパンツが見えてしまった竜児は、にやけ顔にならないよう努めて平静を装いながら、
亜美、麻耶、奈々子の三人をじっと見つめて言った。
そりゃ〜俺も男だし、ヤりたいかヤりたくないかと言われれば俺だってその、ヤりたいぜ、お前らと」
「なっ!?」麻耶のつり目が真ん丸になった。
『!!』顔を見合わせる亜美と奈々子。
えっ!?」大河の箸が止まる。


苦笑いしながら能登がたしなめる。

「おいおい、高須ちゃんまでなんだよ〜 紳士たるものそこは、春田君の発言には当方としてはいささか同意しかねるとか、このたびの氏の不適切な発言ははなはだ遺憾であるとか、もうちょいTPOに即した物言いってのがあんだろ」

竜児は弁当箱の上に箸を休め、両手を机の上に置いて指を組み、静かに話し始めた。

「だってそうだろ、ファッションモデルの川嶋に、クラスで、いや、学年でも1、2を争う美人の木原と香椎
彼女たちと一緒のクラスになれただけでも、一介の男子高校生にとって身に余る幸せだというのに、 そのうえさらにこのナイスバディ軍団と組んずほぐれつ、めくるめく肉弾戦の一夜を過ごせるなんて、まさにプライスレス。 ゴングとともに繰り出される乙女たちの華麗なる空中殺法、飛び散る汗、しなる肉体、美しき獣たちが繰り広げるアーティスティックな戦い。
痛めつけられグロッキー状態の美少女レスラーたちが、あわや大ピンチ!というところで、三人全員が最後の力を振り絞って繰り出す
愛と友情の超必殺技
もしそんな『ランブルローズXX』を実写化したかのような至福のカードで、極悪非道のヒール役を思う存分演じられるんだとしたら、
この高須竜児、わが格闘人生に一片の悔いなし、だ」

肉弾戦?」と麻耶。

格闘人生?」と亜美。

超必殺技?」と奈々子。

なぁ高須、お前、すっげえ勘違いしてないか?」目を細めながら能登が言う。
「そうだよそうだよ〜 たかっちゃん、よく分かってんじゃん。総合格闘技たるプロレスは既に芸術の域に達しているんだよ〜」
いきなりなにを熱く語ってんのよ、このエロ犬」連れが何を考えているのか不安になってきた大河。

「ん? どうした、4Pってあれだろ、プロレスのことだろ?」きょとんとして竜児が言う。

「ブハッ!!」とうとう亜美が吹き出した。
……!!!」奈々子も机に突っ伏して痙攣している。
頬を緩めながら木原が言う。
「ちょっと高須君、なんで急にプロレスの話になるの? てゆうか、あたしたちをパイプ椅子でぶっ叩いたりして痛めつけたいわけ?」
「いやいやいや」
能登と春田が首を横に振る。
「高須としてはむしろ、君たち三人に痛めつけられたいと願っているようだが」
「たかっちゃんはお三方の繰り出す華麗な技の数々を全てかわさずに、この身で受け止めるって言ってんだよ〜」
「そうそう。相手の技は敢えて喰らい観客にカタルシスを与える、それが俺のポリシー」竜児が頷いた。


大河がどもりながら言う。
「ちょっとりゅうじ、あんた致命的なまでの勘違いをしてるわよ。その、よ、よんぴーって、しゅっ、集団エッチのことじゃない!」
「集団エッチってま、まさか
「そのまさかよ! 男があんた一人で、女の子三人を相手に裸で一戦交えんのよ」
「ぬわにぃ〜!!」
頭を抱える竜児。
「高須、お前は春田よりアホだ」と能登からアホのお墨付きが下される。
「ぐわぁ〜〜〜〜! 俺は今、猛烈に恥ずかしい〜〜〜〜」身悶えする竜児。

そんな竜児の様子をじっと見ていた亜美が口を開いた。
「高須君、あたしでよければお相手するわよ」

『おお〜〜〜』クラス中にどよめきが拡がる。
「亜美ちゃん!?」びっくりする麻耶。
すっと眼を細める奈々子。
「やあねぇ、プロレスよ、プ・ロ・レ・ス。あたし、ジムで色々と有酸素運動やってるし、すこしでも脂肪が燃やせるなら
一度試してみたいわ。パートナーと直接肌を合わせなきゃなんない競技だから、顔見知りとペア組んだほうが、なにかと気楽だし」
亜美の助け舟に、ほっとした様子で乗っかる竜児。
「お、おう! サンキュー川嶋! いつでもオーケーだぜ! 地味な寝技から高度な関節技、難易度の高いフィニッシュホールドまで
いろいろ教えてやるぜ!」
「うふっ、楽しみだね高須君! あたし、とぉっ〜ても体柔らかいから、いろんな技い〜っぱいかけてね」
「おうおうおう!」
「えーと、四の字固め、だっけ? 脚と脚をからませるような技、あれかけて」
「おう! 四の字でもなんでも、ありとあらゆるストレッチホールドをかけまくってやるぜ!」
「ほんと? 嬉しいな〜 じゃあ、何十分も、何時間も、ずっーとかけ続けてくれる?」
「おうってそれはさすがにこっちも身が持たねぇぜ
「ウェアはどーしよっかな〜 レオタードでいいよね? うふっ、それともビキニにしよっか?」
「そ、それは別の意味で身が持たねぇ気がする
ひたすら上機嫌の亜美に気圧される竜児。

一方、クラスの男子生徒たちはというと、亜美の連呼する「かけてかけて」の言葉を脳内で反芻し悶々としていた。

やきそばパンの残りを口に放り込みながら春田が言う。
「そういやぁ、プロレス技の本の中にカップルストレッチングってのがあったなぁ〜 恋人同士でやるんだけど、
技の有効性よりも身体を伸ばすことに重点をおいてるみたいなんだ〜」
亜美の目が猛禽類のように光った。
「でかした春田君! ストレッチいいじゃん! 恋人同士がお互いに相手の身体を伸ばし合って、リラックスしていいムードになったところで
って、うっひゃっひゃっ亜美ちゃんもうたまんねー!ね、高須君カップルストレッチやろ、今晩やろー!」
「いや、そもそも俺たち恋人同士じゃないし


エキサイトする亜美をなんとか静めようと、麻耶が両手で押し留める。
「まぁまぁまぁ、落ち着け」
奈々子も後ろから羽交い絞めにして亜美を椅子に座らせる。
「分かったから取り敢えず落ち着け」

「なぁ〜にがカップルストレッチよ。そんなの、いちゃいちゃしたいだけじゃない」大河がぶすっとして言った。
「はぁ?」
むっとする亜美を見て、あわてて竜児がとりなそうとする。
「いや、川嶋はただ、4Pの意味を間違えて恥かいてる俺に話を振ってくれただけなんだよ」
「そうかしら〜? レオタード姿のばかちーと汗だくで組んずほぐれつするうちに、湿った肌にバカエロ犬がついムラムラッとして、そのままセックスに突入って流れじゃないの?」
それを聞いて顔を真っ赤にする亜美。
大河の挑発に、やれやれといった風でぶっきらぼうに竜児が答える。
「ま、そうなったらそうなったで、自然な流れだし。川嶋の身体ってモロ俺の好みだから、つい我慢できなくってヤッちまうってのはあるかもな」
「えっ」怒っていた亜美の身体から、ふっと力が抜ける。

ほとんど告白に近い竜児の発言にいよいよ不機嫌になる大河。
りゅうじ、やっぱあんたってマザコンよね。やっちゃんがあんなにグラマーだから、好みのタイプもおんなじようなボインちゃんなんだわ。
よかったわね、同じクラスにばかちーとか香椎さんみたいな理想のタイブがいっぱいいて」
大河の言葉に、奈々子も目を大きく見開く。
「言えてるぜ大河、確かに俺はおっぱい星人だ。好きなAV女優は浜崎りおだ」誇らしげに己の性癖を主張する竜児。
『うんうんわかるわかる』クラスの男子たちから同意のざわめきが挙がる。
「えっ、そうだったの? 高須ってそのおっぱいが大きくないっつーか、むしろナイチチが好みなのかと思ってたけど」
遠慮がちに言う能登を、大河がギロリとねめつける。
「いやいやいやいや」
かぶりを振る竜児。
「んなこたぁねェよ、何しろうちの泰子ときたら、息子の俺が言うのも何だが、言うなれば女体としての一つの完成型みたいなスタイルしてっから。
物心ついた頃からずっとそんなのを毎日見てるうちに、いつのまにかあの体型こそ俺の理想だと思い込むようになっちまった」
そう言いながら竜児は、美少女三人組に向かって付け加えた。
でもよ、川嶋たちだってなかなかイケてるぜ。三人ともスタイルいいし美人だし」


「もう、高須君ったら、口がうまいんだから」頬をぷっとふくらませながら、麻耶は連れの二人にぼやいた。
亜美はというと、好みの身体と竜児に言われてヘヴン状態、もはや心ここにあらずといった風情だ。
奈々子のほうは、さっきから嬉しそうに自分の胸をさすっている。
「ふ〜ん、高須君って、ボディコンのおねぇさんがタイプなのかぁ
そう言いながら亜美に目配せをして、
ねぇ亜美ちゃん、これって、あたしたちにとってはチャンスじゃなくって?」
なにやら妄想に耽りつつニヤツいていた亜美は、その言葉にようやく我にかえり、
「うっそっ、そうね。ってコトは」
奈々子の胸元をチラチラ盗み見ながら、
奈々子、あんたもやっぱ
「うふふっ、バレてたみたいね。そうなの。ずっと亜美ちゃんに遠慮してたんだけど」
そんな二人の様子を見ていた麻耶も感づいた。
「えっ、ひょっとして、亜美ちゃんだけじゃなくて奈々子も彼のこと好きだったの? これって修羅場ってやつ?」

「まぁ、そんなとこかしらね。ねぇ、麻耶ちゃんは高須君のコトどう思う?」
奈々子の問いに、麻耶は自分でもなぜか、しどろもどろになりながら、
「どうって高須君にはまるおゴホン、その、個人的な悩みでよく相談に乗ってもらってるし、クラスの男子の中ではよく話してるほうかな。目つきはアレだけど、まるおとはまた違ったタイプのイケメンだし、背は高いし、優しいし
「ふ〜ん」
その様子を面白そうに見ながら奈々子が言う。
「彼がもし嫌いなタイプだったら、わざわざ恋愛相談なんかしないよねぇ〜?」
「そりゃそうだよ。って、あれは恋愛相談じゃないって!もう、奈々子ったらバラさないでよ」
「高須君のこと嫌いじゃないのね?」
「ぜんぜん!」
「じゃあさっき、勘違いした彼があたしたちとヤりたいって言ったとき、どう思った?」
「どうって
言葉に詰まる麻耶。それを見つめる奈々子と亜美。
しばらくもじもじしたあと、観念したのか、うつむいたまま上目使いで
正直濡れた」と、ぼそっと呟いた。

そんな美少女三人組の様子をうかがっていた能登。
その顔がみるみる蒼白になったかと思うと、はた目にも気の毒なほどぶるぶると震えだし、激しくむせび泣きながら
竜児に食ってかかった。
「高須てめェーっ、亜美ちゃんや奈々子様だけじゃなく、まっ、麻耶ちゃんまでどんだけオンナ作りゃあ気が済むンだよチキショ〜〜〜〜!!」
その一方で、竜児に尊敬の眼差しを向けるアホ。
「なあ〜たかっちゃ〜ん、たかっちゃんだったらマジでハーレム作れるんじゃねー?」

竜児はというと、亜美の長いすねにプロレスブーツを穿かせたらさぞ格好いいだろうなとか、
亜美と脚を絡ませた状態で果たして自分はどれだけ勃起せずにいられるのだろうかとか、
勃起してしまったら、そのまま彼女と一戦交えずに済む可能性はどのぐらい残っているのだろうかなどと、自問していた。


数週間後。
午前の休み時間、高須君に話があると言う亜美に手を取られ、そのまま教室の外へ連れ出された。
彼女の手のやわらかい感触を楽しみながら、先を歩く小さなお尻と美しいハムストリングスに見とれていると、
いきなりスカートがくるりと半回転したので、彼女が立ち止まって振り向いたのだと分かり、竜児も歩みを止めた。
周りを見回すといつのまにか自販機コーナーまで来ていたことに初めて気付いた。
二人きりになって、彼女が頼みごとを切り出した。
「今度、あたしと麻耶と奈々子の三人で雑誌に載るんだけど、その撮影のとき、高須クンにも一緒にスタジオに来てほしいのよ」
大きなバストやくびれたウェストについつい目がいってしまい、話のほうはよく聞いていなかったのだが、よっぽど呆けた顔をしていたらしく
彼女が膝蹴りを喰らわせてきたので、それでようやく話の内容が頭に入ってきた。
なんでも、亜美が看板モデルを勤めるティーン向けファッション雑誌『Can Vi』で『素顔の川嶋亜美ちゃん』なんて記事が組まれることになり、
亜美の高校生活を紙面で紹介するその企画に、級友である木原麻耶、香椎奈々子の二人が友情出演することになったのだという。

「えっ、ひょっとして俺も、お前らと一緒に読者モデルやって雑誌に載るわけ?いや〜まいったな〜こりゃ〜」
「はぁ〜?なに言ってんの、高須君てバカ?」
「へっ? 違うの?」
「いま一瞬、春田君と話してるみたいだったわ」

撮影の際、業界の男たちの甘い言葉に乗せられて舞い上がった二人が、誘われるままホイホイ付いてって
"
お持ち帰り"されちゃったりしないよう、ここはひとつ、コワモテの竜児を同伴して睨みを利かせてほしいと。
つまりは、亜美の話はそういうことだった。

「だってね、麻耶も奈々子もけっこうマブいじゃん? でもって業界慣れしてないし無防備じゃん?
あたしとしてはさ〜、ウブなダチをこの業界の裏側のヤバい連中なんかとなるべく関わらせたくないわけですよ。
そこで指名手配ズラの高須君に一緒に来てもらって、二人に手を出そうとする不届き者がいたら、思いっきりガンとばして
ビビらせまくっちゃってほしいわけ。
高須君のプロフィールとしては、そうねー大橋高校を仕切る総番長で、でもって地元の暴力団の舎弟で、
おまけに麻耶と奈々子の幼馴染で、二人にちょっかい出すような不埒モンはこの俺サマが容赦しねェぞォ〜って、
まぁそーゆー感じで、ここはひとつお願いね」
……どーゆー感じだそれは」
竜児はため息をつき、亜美の首すじに手を伸ばし、長い指を彼女の髪の毛に絡ませて、耳元で囁いた。
「バイト代は、身体で払ってくれるんだろ?」
「えっ
亜美の身体がぐらり、とよろめいた。すかさず手で支えた拍子に偶然、唇同士が軽く触れ合ってしまう。
すっ、済まねぇ川嶋、いまのは事故だ」慌てて弁解する。
……」亜美はぼんやりしている。
「こーゆー悪っぽい感じでいけばいいんだろ? な、な?」
「あ、うん」
結局、腰を抜かしてしまった亜美を、お嬢様抱っこして教室まで連れて帰ったもんだから、クラスは大騒ぎになった。


撮影当日の早朝、集合場所の駅前。
髪をオールバックにしてサングラスをかけ、ド派手な『登り竜』のTシャツという出で立ちで現れた竜児に、けたけた笑い転げる三人娘。
「だってよぉ〜川嶋ぁ〜、泰子がこれ着てけっつって聞かね〜んだよ」
「あっはははっふふっ、ボディガードっていうよりチンピラって感じよね」
「だって、思いっきりワルそ〜な格好してこいって、お前が言ったんじゃねーか」
「それが〜?ワルはワルでも、あったまワルそ〜って感じだわ」
「お前なぁやっぱバイト代よこせよ川嶋」
「うふっ、楽しみにしててね」
高須君って、やっぱアブナい、ってか可愛い」
「うふふ、今日はあたしたちの用心棒役を宜しくお願いね、高須君」


出版社の用意したレンタル撮影スタジオは、都内の雑居ビルの一角にあった。
天井の高い白ホリゾント式と淡いクリーム色のバックペーパー式の2つの本格的なスタジオがあり、傘付きの三脚ストロボライトが
何本も立っている。
ここはアダルトの撮影にも使われるとのことで、ソファルームやベッドルーム、バスルームなどがあり、学校の教室を模した一角もあった。
「こんにちは、よろしくお願いしまぁ〜す」
「やぁ亜美ちゃん、この娘たちが亜美ちゃんのお友達? 二人とも可愛いねぇ〜」
亜美が出版社の男たちに友人を紹介する。
「はじめまして、木原麻耶といいます」
「こんにちは、香椎奈々子です」
「どもども〜、初々しくてイイねェ〜。うひゃっ、そっその後ろの彼は?」
俺は高須竜児っていいます。そこの二人のクラスメイトです」
見知らぬ男たちが亜美に馴れ馴れしく話しかけて、彼女もそいつらに愛想笑いしているのが竜児は気に入らない。
プロのモデルなのだから、一緒に仕事をするスタッフとコミュニケーションをとるのも仕事のうち、当たり前のことだ。
そう自分にいくら言い聞かせても、亜美が業界人風を吹かす連中と仲良さそうにしているのを見ると、元からヤバい目つきが
一層険悪になった。何より、男たちが麻耶と香椎に浴びせる、まるで品定めをするような目線に心底ムカツいた。

「高須君どうしたの? なんだか殺る気オーラまんまんじゃない」そんな男心も知らずに麻耶が茶化す。
「スタッフの人たちが警察呼ぼうかって言ってたわよ」奈々子が面白そうに言う。
「くそう、こんなんだったら大河の木刀借りてくるんだったぜ」
「あら、ひょっとして亜美ちゃんと仲良くしてるスタッフさんにやきもち?」と奈々子。
「そ、そんなことは
図星だ。
「あははっ、高須君って可愛い〜」麻耶がはしゃぎながら、竜児を小突き回す。


撮影が始まる。照明がこうこうと輝き、スタッフが機材をもって忙しく動き回る。
さすがは現役モデル、亜美は表情もポーズも次々に決めていく。あぁここが彼女の仕事場なんだと、竜児は思った。
学校でときおり彼女がみせるフォトジェニックな表情よくあんなにくるくる表情を変えられるものだと感心していたが、
そのルーツを見た思いだ。
自分が撮られるだけでなく、亜美は他の二人のポーズにも注意を払い、マネージャーのように細かく指導していた。
「ほらほら、奈々子、その角度じゃ見えちゃうよ」
級友のきわどいミニスカートのすそにも気を配る。そんな亜美を眺めながら竜児はふと、
「そう言えば俺、学校の自販機コーナーでいっつも川嶋のパンチラ拝ませてもらってるような
と思い当たった。
休み時間に竜児が自販機コーナーに行くと、なぜか決まって例の隙間に彼女が嵌っているのだが、
缶コを買って向かいに腰を下ろすと、最初は鉄壁のスカートに守られて見えなかったのに、だんだんとガードが崩れていき、あらわになってゆく。
ひょっとしてあれは、見せてくれてるのか? まさかな


撮影も大詰めになり、三人の同級生が揃って白銀のビキニ姿で登場したときは、竜児も感嘆した。
亜美のスタイルの良さは知っていたが、他の二人も、元々の素材の良いのに加えて、現役モデルの同級生にちょっとでも近づきたいという
努力の甲斐あってか、なかなかのものだった。

三人のなかでは一番派手めな亜麻色の髪と、愛らしい顔立ちに気の強そうなつり目がチャームポイントの木原麻耶ちゃんは、
夏のプールの授業ではもっと女の子らしいふくよかな体つきだったと竜児は記憶しているが、
目の前のキラキラしたビキニをまとっただけの姿はいつのまにかきゅっと引き締まって、伸び伸びとしたスレンダーボディへと変身していた。
「木原って痩せたよな〜、あいつ、あんなに胸があったんだ
初々しく上を向き、これからも更なる成長が期待される麻耶のバストは、以前プール開きの際に竜児が大河のために作った、高須特製乳パッドをはるかに越えるサイズと格好良さだった。

黒くて長い髪に優しそうな顔、大人っぽい雰囲気の香椎奈々子は、麻耶と同じようにすらりとした長身をしているが、まだまだ膨らむ余地がある麻耶のそれとは対照的に、高校生にしてはあまりに肉感的に過ぎるそのバストは、どう見ても水着のブラに収納し切れていなかった。
いったいお前はどこのグラビアアイドルだよ、香椎」
一学期のころは、制服がはちきれそうな胸とお尻で2-Cの男子生徒たちの熱い眼差しを集めていた彼女も、今ではたわわな乳房に不釣合いなほどに細くくびれた腰、チューリップを逆さにしたような、という表現がぴったりの美尻という、まるで思春期男子の性的妄想を一気に爆発させたような、見事に絞り込まれたプロポーションに変貌していた。
上体が動くにつれ、たわわな乳房がぷるんぷるんと揺れる悩ましい光景に、竜児だけでなくスタジオ中の皆の視線がクギ付けになる。

そして亜美。
もう少しで奈々子に並びそうなサイズの美しいバスト、美しくキュッとしまったウエスト、小振りで格好いいヒップに長い腿、すらっとしたふくらはぎという、美の化身のような体形には、文句のつけようもない。
"
ファム・ファタール"という言葉の意味が竜児にも分かったような気がした。