竹宮ゆゆこ総合スレ SS補間庫
   

 

高須棒姉妹2

−これまでのあらすじ−

クラスメイトの川嶋亜美に誘われて、彼女がモデルを勤めるファッション雑誌『Can Vi』の撮影会に同行して、 素人モデルとして参加する木原麻耶と香椎奈々子のボディガード役をすることになった高須竜児。

ところが、このべっぴん三人組、なにやら良からぬコトを企んでいるようであるが、はたして…


ドアの向こうから漏れてくる音楽とクラスメイトたちの嬌声。

メインスタジオで亜美たちが撮影を続けているあいだ、竜児は撮影に使われていないベッドルームに引っ込んで、 一人仰向けでベッドに寝っ転がっていた。

現場のスタッフが亜美と仲良さそうにしたり、麻耶と奈々子をチヤホヤしたりするのを見ていて、自分でもどうしようもなく イライラを募らせてしまった竜児。

自分の極悪ヅラが平和な市民生活の場に及ぼす深刻な影響については日頃から充分自覚し、自重している彼であったが、 知らず知らずのうちに己の魔眼のリミッターを解除してしまい、見た者全てが震え上がるほどの凶悪な目線を周囲に浴びせかけてしまった。

その結果、ベテランのチーフカメラマンはカメラを持つ手をガタガタと震わせてシャッターミスを連発し、 アシスタントの兄ちゃんは恐怖のあまり膝をガクガク震わせてカメラの備品を盛大に床にばら撒き、 うら若き女性スタイリストは怯え切ってライトの傘の陰に隠れて『御免なさい御免なさい』と、しくしく泣きだし、 雑誌『Can Vi』の女性編集長に至ってはトイレに篭ったきり、幾ら呼んでもそのまま出てこなかったりと、

現場の進行に大いなる支障を来たしてしまい、この事態を重く見た亜美に、

「高須君… ちょっと、頭冷やそーか…」と、しかめっ面でスタジオを追い出され、大人しくベッドルームに引きこもっていた。

白い天井をぼんやり眺めながら、ふと、ここで撮影されたビデオを俺は見たことあるんだろうかなどと考える。


「あ、高須君いた、みてみてこの格好」


いきなり部屋のドアが開き、ヒールの音をカツカツと響かせながら、バニーガール姿の麻耶と奈々子があらわれた。

麻耶がキュートな赤バニー、奈々子がセクシーな黒バニーだ。

二人の見事にくびれたカーヴィーなボディライン。股のところがV字型に大きく切れ込んだハイレグスーツとお揃いのハイヒールが、 網タイツを穿いた脚をさらに長くみせている。


「どーすかこれ、男子的には」と赤バニーが言った。


ごっくん。

自分がなま唾を呑み込む音が部屋じゅうに大きく響きわたるようだった。

さっきのビキニ姿にくらべると肌の露出は少なめなのに、どうしてこんなにエロいんだろう。

いつも学校でかぶりつきで見ている、櫛枝実乃梨の競走馬のように躍動感溢れる太腿とは違い、JKっぽい、のほほんとした脚線美。

網タイツが織り成す立体的なグラデーションが、腿やふくらはぎのなだらかな起伏をさらに生々しく強調している。まるで性的なオブジェみたいだ。

彼女たちの下半身をついつい視姦してしまうのを何とか堪え、視線をあてどなく泳がせながら、表向きは、そんなもん興味ね〜よ的な硬派を装う。


「なぁ、衣装がエロティックすぎるぞ、…これってティーン向けのファッション雑誌の撮影なんだろ?」

「スタッフさんたちが持ち込んだ衣装の中にあったんだー。面白そうだから着させてもらっちゃった」と黒バニー。

「なんだよそりゃ、未成年にこんな格好させんなよな」

「いいじゃん、こんくらい」と赤バニー。


「ねぇ、ほんとにここでAVの撮影してるのかなぁ」


そう言いながら、奈々子は前屈みになって巨乳をたゆんたゆんとバウンドさせながら、何度も男女の淫らな行為が演じられたであろう 舞台に上がり込んだ。そのまま四つん這いになると、豊かな乳房が見事な釣鐘型になる。なんと言うかもう、目が眩むような光景だ。
彼女のそのポーズは、竜児にアダルトビデオの『女尻』シリーズのパッケージ写真を連想させた。


「そーみたいだよ」


そう言いながら、麻耶もその細身の身体をベッドにぼよーんと投げ出して、


「…あたし、編集の人に携帯の番号聞かれちゃった〜。スカウトされたらど〜しよ」


「あたしもー」と奈々子。


「奈々子はおやぢに超受けてるよねぇ。みんなかぶりつきで見てるもん」


まるで紅月カレンのようにスレンダーな赤バニー姿の麻耶は、長い腿をがばっと開いてあぐらをかき、頬杖をついている。まるでオッサンだ。

むちのようにしなやかな麻耶の赤バニー姿と、胸の辺りがもうパッツンパッツンでヤバい香椎の黒バニー姿を間近に見ながら思う。

なんか夢みたいな光景だよな。バニーガールの格好した同級生の女子ふたりと、ベッドの上でダベッてるなんて。

…いやまてよ、たしか期末前に春田が『〜という夢をみたんだよ〜』とか言ってて、そのときの夢ってのが確か、こんな風に クラスの女子がバニーガールになって出てくるって内容じゃなかったか?… なんかこれって、その夢の話そのまんまじゃねぇか?

…もし、もしも、この上さらに亜美がミニスカサンタの格好で出てきやがったりしたら…
実はこの世界は春田が見ている夢で、この俺はその中の登場人物に過ぎなくって、ふと気がつくと自分も裸エプロン姿になっていた…

…なんてことになったりしねぇよな?

などと、突如襲ってきた非現実感に、まるでフィリップ・K・ディックの小説みたいに己のアイデンティティがガラガラと音を立てて 崩壊していく竜児であった。


「あら、三人でもう始めちゃった?」


亜美がベッドルームに顔を出した。

竜児がほっとしたことに、彼女はミニスカサンタの衣装ではなく文化祭のミスコンの司会で着たボンデージスーツでキメていた。


「お、俺はなにもしてねぇ!」

「ふうん」


露出の多い衣装をまとったスタイル抜群の身体が、大またを開いて竜児の前に立った。

美しい顔立ち、陶器のようにつるつるの肌、手入れされたさらさらの黒髪、一目で鍛えているとわかる引き締まった身体。

そのあまりのナチュラル・ボーン・ビューティー振りに、業界内では“フォトショップ要らず”とも称される、若き日本のファッション・アイコン川嶋亜美は、 かつて大橋高の男子全員を興奮と熱狂の渦に叩き込み、一夜にして同高校のセックス・シンボルとなったあの女王様スタイルに、
そのワールドイズマインな肢体を包んでいた。まじかで見ると、裸でいるほうがまだマトモなんじゃないかと思えるほど、たまらなくエロい。

お椀を伏せたようなかたちの二つの乳房がくっきりと強調され、そのあいだに深い谷間をつくっている。

もちろんおっぱいだけではない。

スーツの隙間から覗く美しい縦長のおへそ。赤い網タイツを穿いた長く細い脚。絶対領域を横切るスーツと一体化したガーターベルト。

どのボディパーツひとつとってもポップでフェティッシュ。まるで等身大のフィギュアが立っているかのよう。

そもそも、放つオーラが他の同級生二人とは違った。彼女のヒールのコツコツという音すらまるで違う音のように聞こえる。

竜児は、この目の前の美しいヒューマノイドは、ほんとうに生物学的に自分と同じ人類という種族なのかと、不安になった。

平成生まれの美のモンスターは、しかし半日の撮影のあとでかなりお疲れのご様子だった。表情をつくるのもダルそうに、その悩殺的な出で立ちとは裏腹に、いささかたるんだ表情で、ぐるりと室内を見回した。


「…な〜んかここってさぁ〜、アダルトビデオの撮影にも使われてるっぽいよ〜? 高須君って〜、そーいうの好きそーだよねぇ〜」


いつものからかい半分の口調と違って、別にどうでもいいのよ〜といった感じの物言い。

彼女が見せるその素の顔が、竜児はちょっと嬉しかった。


「そりゃまぁ、人並みには見るぜ」

「ふふん、ど〜ですか〜、そのAVを実際に撮影してる場所に、こんな風にクラスの女子と一緒にいるっつ〜のは」


竜児は考え、正直に答えた。


「…正直たまりません」


こんな場所に女の子と一緒にいるというだけでも、頭がどうにかなっちまいそうなのに、こんなきわどい格好されたらそりゃ〜もう。 そう言うと、亜美は頬を赤らめて恥ずかしそうな表情になって、おずおずと切り出した。


「ねぇ高須君、せっかくだし、記念にあたしたちとその、ちょっとだけ… そーゆービデオ撮ってるふりとかしてみない? 」


「…はい?」(突然何をおっしゃるんですか?)ぽかんとする竜児。


「いやだからホントにエッチするんじゃなくって、してるふり。ただのおふざけ。抱き合ってその、…股間を合わせて、腰とか振っちゃって、 いかにもヤッてるようなふりして、それを撮影してるまねして、現場の雰囲気だけ味わってみるの」


前屈みになった亜美の黒い髪が竜児の頬を撫でる。

(なん……ですと……?)性的魅力溢れる異性の友人からの性的過ぎる提案に、日頃から性的な男子高校生としては応ずる言葉もない。


「そうそう、あたしたちが女優役で〜」と赤バニー。


「高須君が男優役」と黒バニー。


二人して左右からすり寄って腕を絡めるという、性的なアプローチを猛然と開始する。と、何やら肘のあたりに柔らかい感触。

(うおおぉぉぉ〜〜〜〜〜!! こ、これは、おっぱい!!)と、肌に吸い付いてくるような優しい感覚に動揺と狼狽を隠せない。
これは、なんというハーレム的状況…。

半日の撮影で彼女たちは汗をかいていた。いつもの芳醇な乳製品のような甘い匂いに、なにやらザラリとした苦い味が加わっている。

体育のあとの教室のようなその匂いと、しっとりすべすべして弾力のある肌の感触が、竜児をまだ知らぬ大人の世界へと誘った。

(済まねぇ櫛枝…大事にとっておいた俺の童貞… もう、お前に捧げられねぇかも)

高まりゆく快楽への予感に、まるでいそぎんちゃくに囚われた小魚のように身体がじんと痺れ、理性が薄れていく。

思わず、ヤらせてくださいと言いかける。


「ヤ、ヤら」

「え?」

「ヤらすぇ…」

「どうした、高須君?」

「…ヤらしい」

「…インコちゃんかあんたは。つ〜か、いま別のコト言いかけたでしょ?」


同級生の肢体に見とれている自分。それを見つめているもう一人の自分が問いかける。

お前はなぜここにいる? 彼女たちの保護者役としてだ。それなのに何を考えている? 彼女たちをどうしたい? なにをしたい?

…それじゃあ、あの大人たちと同じじゃないか。そんなことをしていいと思ってるのか?


一回だけ。それがどういうものか分かればいいんだ。


頭の中のもやもやを振り払って竜児は言った。


「三人とも、すげぇ嬉しいんだけど、俺はこう見えても、その… 常識的な人間なんだ」

「ほっほ〜う?」

「それに、俺にとってセックスってのはさ、…その、遊びじゃなくって神聖なものなんだ。女の子を好きになって、その娘と愛し合って、 その先にあるものなんだ」


てっきり鼻で笑われるかと思ったが、亜美は神妙な面持ちでそれに聞き入り、そして言った。


「もう、高須君たら、そんなに実乃梨ちゃんのことが好きなの? 他の女の子にはな〜んも興味ないってこと?」


竜児は考えた。

実乃梨は可愛らしい顔立ちをしているが、とびきり美人というわけではない。クラスの男子たちに人気はあるが、一番ではない。


「そうじゃねぇ。興味はあるさ。前にも言ったろ、俺はおっぱい星人だって」


麻耶が竜児の肩にあごをちょん、と乗せてきた。亜麻色の髪が首すじに触れ、息が吹きかけられる。その感触に思わずうっとりとする。


「櫛枝って胸おっきいから、そこがいいんじゃね?」


奈々子が竜児の心を見透かしたように言う。


「べつに実乃梨ちゃんを裏切るわけじゃないわ。これはただの悪ふざけ、所詮はAV『ごっこ』なんだしさ」


しゃべるたびにメロンサイズのバストがぷるぷると震える。とてもじゃないが目の毒だ。
情け容赦の無いお色気の波状攻撃。…もうやめて、男子高校生のライフはもうゼロよ!!


「でもよ…」


亜美が見下ろしながら挑発。


「そんなに構えなくてもいいじゃない。タバコやお酒と同じ、日常からのほんのちょっとした逸脱って奴よ」


しかし竜児には、ヤるならヤるで一応確認しておきたいことがあった。


「あのさぁ、木原はその、北村が好きなんだろ? …いつもあいつのコトで相談をふっかけてくるくせに、俺なんかとそんなことしていいのかよ?」


麻耶はにたにたしながら、


「だってさ〜、ダチが二人とも初体験を済まそうってのに、あたしだけバージンのままっつーのも、な〜んか寂しいじゃん」

「何だって!?」(…こいつら、最後までヤる気なのかよ!)とビビる竜児。

「あっヤベッ」口を押さえる麻耶。


亜美が早口であせったように、


「だってほらぁ〜、祐作ったら、こっちからどんなにコナかけても知らんぷりで、麻耶のコト、な〜んもかまってやらね〜し」 と言いつつ、(…あんたもさ〜、あたしのこと全然かまってくんね〜けどな…)と少し落ち込む。

それを聞いた竜児も、(俺と同じだ、櫛枝は、…アイツは俺の気持ちを受け入れてくれねェ)と仲良く落ち込んだ。

奈々子が解説めいたことを言う。


「女の子ってさ、その… 一方では性格の良いスポーツマンでしかもハンサムな生徒会長にココロ惹かれながらも、 もう一方で、目つきが鋭くて家事と料理の得意なクラスメイトの男の子が何とな〜く気になっちゃたりするもんなの」


「んなもんか〜?」と疑わしげに竜児。

「そうそう、そ〜なんすよ」と頷きながら麻耶がくっくっくっと笑う。もう逃がさへんで〜、とでも言うように。

迫り来る貞操の危機。…危機と言ってもぜんぜん痛くも痒くもない、逆に凄く気持ち良さそうな危機だが…。

…どうする? ヤらせてもらうか? しかしながら、さっき木原がポロッと漏らした本音によれば、亜美の言うように「セックスのまねごと」ぐらいでは
とても終わりそうにない。まさに絶体絶命、交戦は回避不能。


(…ここは彼女たちの顔を立てて、形だけお触りして勘弁してもらおう)

そう意を決した竜児は掴まれていた腕をすっと振り解き、彼女たちの腰にするりと回してぐいっと抱き寄せた。 麻耶が小さく「きゃっ」と言い、奈々子がはっと息を呑む。


「三人ともサンキューな。…でも俺、今日のところはホラ、みんなのボディガード役だからさ。こんくらいで止めとくわ」


そう言いながら、自分でもとんでもねぇコトしてんなと思いつつ、目の前のモデルの胸元に何度も口付けした。


「うひゃっ!?」


恥ずかしがる亜美をそのままにして、返す刀で両脇のバニーガールの胸元にもキスの雨を降らせる。


「ひゃわっ」「ふえっ」


身を強張らせて固まってしまう二人のバニーガール。その初々しい反応を見ながら竜児は言った。


「今のでバイト代、チャラにしとくわ」


そんな風に表面上は余裕オーライぶっコキつつも、実際のところは初めて触れる女体の柔らかさや、押し付けた唇をやんわり押し戻す乳房の弾力、
そして、やや酸味がかった皮脂の味わい、それらのめくるめく感覚に身も心もとろけそうな竜児であった。

『……』三人がバツが悪そうに俯いて黙り込んだ。

呼び覚まされた乙女の恥じらいに彼女たちが困惑しているそのスキに、

「俺、コーヒー飲んでくるわ」と言って、竜児は席を立った。
(キマった。…なんとか窮地は脱したぜ…)と一人ごちる。…が、勿論そんなハズなどないのであった。


撮影が終わり、スタッフからの『これから食事でも?』というお誘いをやんわりと断り、亜美は三人をスタジオの外に連れ出した。

あたりはもうとっぷりと暮れている。明滅するネオンの光が、三人の娘たちの横顔を青や赤に彩っている。

「ふわ〜 終わったぁ〜」奈々子がぼやいた。

「あたし、顔の筋肉が疲れたっつーか、痺れた」麻耶が頬っぺたを揉みほぐす。外の冷気が火照った頬に心地よい

「二人ともお疲りゃしたぁ〜、ほんじゃ、行きますか」
「どこへ行くんだ、川嶋?」

「食べに」



四人で繁華街を歩いていくと、道行く男たちが次々にこっちを振り向く。

無理もねぇ、と竜児は思った。こんなキレイどころが三人も連れ立って道歩いていたら、誰だって見る。

男たちの感嘆と賛美のこもった視線が連れの同級生たちに遠慮なく浴びせかけられる。

麻耶と奈々子が左右からぴったり寄り添ってきた。すがり付くようにがっちり組んだ腕から、彼女たちの緊張が伝わってくる。

竜児の肩ごしに亜美が囁いた。


「…高須君を呼んでおいて正解ね」

「うお〜メガマック!!」

「ほいひ〜」


ファストフード店でハンバーガーをほお張る麻耶と奈々子。
そんな級友たちを見守りながら、亜美はナゲットをひとつつまんで、マスタード&ケチャップをつけて口に放り込む。


「節制のあとって、このいかにも身体に悪そ〜なトランス脂肪酸がたまらなく美味しいのよね」


うんうん、と頷く二人。

聞けば三人とも今日の撮影にそなえて、この2週間ずっと節食していたのだそうだ。


「もうね、町歩いてるとショーウィンドウの中の食べ物が光り輝いてみえるんだもん」と麻耶。

「そーそー、スドバのケーキとかパンとかもう、目に突き刺さってくるみたいな」と奈々子。

「そのうち夢に出てくるから」と亜美。


竜児が『あしたのジョー』の減量みたいだと感想を述べると、驚いたことにみな知らなかった。


「文化祭で櫛枝がズラ被ってやってたあれだよ」

「つうか、あしたのジョーって、あんなハゲのおっさんなわけ?」


櫛枝の名を聞いて亜美は、その美貌をほんの少し曇らせる。

「違う、あれは力石」と自信たっぷりに麻耶。
「…丹下段平」竜児が訂正する。

彼女たちは見るからに消耗し、疲れきっていたが、同時に浮かれてもいた。竜児にもその気持ちはなんとなくわかった。

スタジオの中で、彼女たちはカメラの前に立ってポーズを取りながら、かつて経験したことのない自己愛と高揚感と自惚れの海のなかにいた。

美しく生まれた女だけが享受できる悦び、他者からの賞賛と肯定、その余韻がまだ抜け切っていないのだ。


残ったナゲットをつまみながら亜美が言う。


「それじゃ、腹ごしらえも済んだことだし… もういっちょ行きますかね」

「まだ食うのかよ?」


亜美はその美貌に肉食系の笑みを浮かべ、竜児に向かって言う。


「お次はデザートよ」


麻耶もにたにたと悪戯っぽく笑っている。


「実はメインディッシュだったりして〜」


香椎が竜児を指差しながらウィンク。


「高須君、あ・な・た」


竜児は溜息をついた。スタジオでのアプローチから、とりあえずは『覚・悟・完・了』できていた。
終わってしまったお祭りの後。このまま今日という特別な日を終えてしまうのはもったいない。もう少し非日常を引っ張りたい。

そんな気分を抱いているのは竜児も同じだった。
しかし、いざ初体験、それも一度に三人を相手するとなるとつい緊張して、身体が震えてくる。
三人は竜児をじっと見つめて了解の返事を待っている。

返事しようにも声が出ない。竜児は残ったフライドポテトを無理やり口に詰め込んで、ブラックコーヒーで呑み下した。


部屋の明かりを点けないまま、四人は裸になった。

締め切ったレースのカーテン越しに、歓楽街のネオンの色とりどりの光がホテルの室内をやんわりと照らしだす。

その光が彼女たちのなめらかなシルエットを薄闇の中にぼんやりと浮かび上がらせ、肌の隆起にしたがって青や赤のグラデーションを描いた。

服を脱ぎ捨てる衣擦れのするするという音だけが室内に響く。


シャワー室に四人がぎゅうぎゅう詰め。

女子の甘ったるい体臭が竜児の鼻腔を満たした。


「ひゃーちべたぁーい」

「手ぇ、高須君、手!」

「あっははは、手が早ぇぞ男子!」

「男子のカラダってゴツゴツしてて当たると痛ぁい〜」

「さっきからケツばっか触り過ぎだろゴルァ!」

「あっ、おっきくなった!」

「高須キモイ!」


少女たちの弾けるような嬌声が割れんばかりに響く。

もはや自分が、道徳的な人間とは思えなかった。

目の前のモデルの肉体に、ためらわずに手をのばす。

竜児の指に触れられて、亜美は嬉しそうに喉を鳴らした。

手のひらで腿の内側を上下に撫でまわすと、彼女は陶酔したように腰をくねらせた。


「あんっ、たかすっ、クンッ」


竜児の肩に額を押しつけ、甘い息を吐いて身をよじる。

量感と美しさを兼ね供えた乳房が、まるで悦んでいるように揺れる。

太腿のあいだに長い指がもぐり込み、秘所をまさぐりだすと、それに反応して大きく震える。


「ダメよ亜美ちゃん、彼を独り占めしちゃ。…私にもして、高須君」


奈々子の濡れた髪が胸元にだらしなくまとわりついて、その肉体をさらに官能的にみせている。
それを見た竜児は思わず手を伸ばし、その巨乳を思いっきり鷲掴みにしてしまう。
指にねばりつくような乳肉の感触が、残っていたわずかな理性を吹き飛ばした。
そのままぐいっぐいっと荒々しく揉みしだいてゆく。激しくこねくり回すと弾力のある肉がむにゅっと悩ましく歪む。


「そうッ、もっと強く揉んで、もっと… 気持ちいいわ、高須君」
豊満な乳房をいたぶられ、真っ白い肌が艶めかしく上気してゆく

「…奈々子ちゃんったら、おっぱいで誘惑するなんてずるいっ」
「だって、こうでもしないと、亜美ちゃんには到底敵わないんだもの」

そのまま亜美の美乳と奈々子の巨乳に押しくら饅頭され、揉みくちゃにされていった。
柔らかい肉のクッションにずぶずぶと埋もれてゆく。深く息を吸い込むと乳製品のような甘酸っぱい香りがする。


「高須クン、両手に花だね〜」


もう一人の同級生、木原麻耶が背中から抱きついて密着してきた。形の良い胸を摺りつけながら、可愛い唇で首すじにむしゃぶり付いて甘噛みする。

六つの優しい手が、竜児の体じゅうをくまなくまさぐり、優しくつねり、引っかき、愛撫してゆく。


「高須君、二人ともずっと我慢してたんだよ。遠慮しないで、いっぱい可愛がったげて」


ギンギンに勃起した高須棒に麻耶の細い指がそっと触れる。そのまま握られて、あまりの快感に竜児はうめいた。


「ちょっと木原、ダメだそこは!」

「へっへー、離さないも〜ん、高須君のおちんちん」


麻耶の手が茎の部分を握り締めて上下に擦り上げ、もう片方の手の指先で亀頭を優しく包み込んで撫でさする。

やわらかい二つの手で肉棒を揉みくちゃにされ、痺れるような快感が背中を駆け上ってくる。


「うふっ、タイガーや櫛枝は、こんな気持ちイイことしてくれないでしょ?」

「あっ、当たり前だろ。木原、もうそれ以上はッ…」


膝が震え、腰が砕けそうになる。足の裏側が熱くなっていく。絶頂へと至る坂道を引き返せないところまでどんどん駆け上がっていく。

もう立っていられず、亜美と奈々子に両手でしがみついた。娘たちが優しく手を合わせて指を絡めてくる。


「うあぁっ、…木原、もう、…イきそうだっ」

「…どうする亜美ちゃん?」

「そうね、…高須君、あたしたちにかけて」


そう言うと亜美は、すべすべした下腹部を押し付けた。
体中の血液がまるで沸騰するように感じられたその次の瞬間。目の前の裸体に向かって白濁液を噴出した。

性経験のない三人から驚きの声が挙がる。
なめらかな下腹部や腿にどろりとした粘り気のある汁が飛び散り、汚していく。
実は臭いフェチである奈々子は、自分の腿にかかった精液を指ですくい取り、その刺激臭をまじかで嗅ぎながらうっとりとしていた。


「すっごい匂いだったね〜」

「なんか、コツが掴めました、あたし」

「うふふっ、高須君のあのときの顔、可愛かった」


                          つづく