竹宮ゆゆこ総合スレ SS補間庫
   

 

日記。徒然に。。。4




香椎奈々子の日記より抜粋。
1月17日。
今日、麻耶が私に言ってきた。「私はまるおが好き。でも高須君も同じ位好きだ」って。
どっちかなんてまだ麻耶には選べないんだろう。
でも、私はどうなんだろうか?
私はまだ麻耶程に高須君が好きとは言えない。多分まだ、限りなく好きに近い、友達。それが本当。
高須君とは今日もスーパーで会った。多分明日も、明後日も。
ねぇ?私にとって貴方はなんなの?高須君。貴方はどう思う?
明日はもう始業式。どこか慌しい冬休みだった。


恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
1月17日。
夜のニュースで長野県で暴力団組長が殺されたと言うニュースが流れていた。
上手く行ったのね?竜。
生徒を導く立場の私がこんな事を口にする。もう後戻りは出来ないのかも知れない。
貴方はこれからどうするの?地下に潜るの?ガラをかわすの?
でも良いわ。私はここに居る。だから……また、逢えるわ、竜。
さて、明日からは3学期かぁ。夜は夜、昼は昼。使い分けないとね!
とりあえずゴルゴ13の続き読まなきゃ!今日は43巻ね


狩野すみれの日記より抜粋。
1月18日。
このままではどうにもいかんな!これは早々に解決しなければ成らない問題だ。
大体、高須の奴も私を見つめ過ぎだ!始業式で私が話してる間中ずっと見つめて来やがる。これじゃぁ…集中出来ないじゃないか……
いや!まずだな、私は確かに高須の奴は見所のある奴だとは思ってたし、面白い奴だとは思ってた。
だが!別に男として見た訳じゃないし、確かに何度か二人で、その、行動はしたがそれは偶然と言うかなんと言うかで、特に他意が有った訳じゃない。
一体なんで奴は私に?アイツにそんなフラグを立てた覚えは無いぞ。
もうココまでだな。近々アイツを呼び出してはっきりさせよう。コレわ。


櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
1月18日。
今日から学校だ。まぁいつも通りの生活が始まる。
でも北村君は凄いよねぇ。いつの間にかしっかり生徒会役員として壇上に上がる立場になってる。
まぁアニキ会長なんて2期目だし、全校生徒が注視する中で堂々と話してるなんて凄いんだよね。だって去年もなんだし。私には無理だ。
そうそう、北村君が「高須が合コンに行けなかった事を櫛枝に謝っておいてくれって言ってたぞ」って言ってきた。
私はそんなに真面目に合コンしてなかったし、高須君って噂と違って律儀なんだね。ちょっとビックリだ。


木原麻耶の日記より抜粋。
1月20日。
冬休みの間に私は自分の気持ちと向き合うことが出来た。これからはまるおともっと親しくなろう。
でも問題は高須君だ。私は奈々子みたいに料理しないから買い物もあまりしないし、料理の話も出来ない。
昨日奈々子の買い物について行ったらスーパーで高須君に会ったけど、結局私とは会話が続かない。
なんか無いかな〜。取っ掛かりが無いのよね!取っ掛かりが。
でも帰りに突然私に手袋貸してくれたのには驚いた。
私だけ持ってなかったの気付いてたみたい。なんか嬉しかった。途中から道が違うから返すって言ったんだけど「良いから使っとけ」って。
人の言葉も聞かないでさっさと行っちゃった。奈々子がジト目で見てたけど、良いじゃない?言った筈だよ?奈々子にはさ。
明日、なんて言って返そうかな〜。この手袋。

1月22日。
少し遅れたけど放課後、高須君に手袋を返した。なんか一人じゃ呼び出せないし、困ってたらまるおが声を掛けてくれた。
でもなんかすっごい不味いよね私!
だってまるおの事が好きで高須君の事が好きで、高須君に借りた手袋をまるおの口利きで返すってアリ?無い無い!!
でもさぁ、まるおも高須君も私の気持ちなんて知るわけ無いじゃない?告白もして無いし、高須君とはまだあんまり接点ないし。
なぁんかもう「これ!ありがと!」だけ、言えたの。「おう」って貰ってくれたけど彼もそれだけ。
それから少し放課後の一時を誰も居ない教室で3人で居たけど、なんか高須君とまるおは二人で普通に喋ってるんだけどさ、私は蚊帳の外って感じ。
「じゃ!私帰るから!」って飛び出しちゃった。ちょっと勿体無い感じだったけど仕方ないよね。
でも最期に高須君が「わざわざ悪かったな」って。ホントにお人よしだよね。助かったのは私なのにさ。


香椎奈々子に日記より抜粋。
1月22日。
……どうしよう……
明日と明後日の土日は用事が有るからって麻耶に嘘を付いた。だって………麻耶にどんな顔で会ったら良いかまだ分かんないから。
今日、図書室で調べ物に時間掛かっちゃって、で教室に忘れ物したのを取りに行ったら麻耶が飛び出して行った。声を掛けようと思ったんだけどその前に「悪かったな!」って。
なんでウチのクラスから?って思った。だって高須君の声なんだもの。
私がビックリして固まってたら北村君の声が「でもホントに良いのか?高須」って聞こえてそして「良いんだよ……俺は香椎が良いんだ……」「そうか。ま、良いならいい」
………………どうやって家に帰ったのか覚えてない。
夕飯は出来合いの物を買って来た筈なんだけど、食卓にはお米とプリンとお味噌汁とコーンスープが有った。
「お父さん変わったご飯ね?私、なんか食欲無いからもう寝るわ」って言ったらコクコク頷いてた。変なお父さん。
はぁ……どうしよう……私



狩野すみれの日記より抜粋。
1月24日。
明日、私はケリを付け様と決めた。
奴がどう言う積もりか、そして私は……どういう積もりなのかを、な。
高須竜児を呼び出して聞こうと思う。
何故奴は、クリスマスの夜に私を誘ったのか。
だが私はあの夜、奴を暗に遠ざけ拒んだ。それでも奴は正月には笑ったし、両親に会いたいとも言う。奴の想いはなんだ?
ソレを明日、私は高須に聞こうと思う。お前はどう答えるんだろうな?高須。


香椎奈々子(父)の日記より抜粋。
1月24日。
やはり奴を殺るしかない。
奈々子の様子がおかしい。いや、おかしいを通り越してあやしいのレベルだ。
何故3食ひたすら赤飯を喰わせられるのか私は問いたい!が、理由は分かってる。いや、他には考えられない!
あの初詣の時の侠客に違いない。しかし幾らなんでもココまでとは……まさか!!
赤飯……可愛い奈々子……赤飯……刺青持ちの腐れ外道……赤飯……もう女子高校生な奈々子!!!!
奈々子?そうなのか奈々子ぉぉぉ!!
ふ、ふふふ、はははははぁぁって舐めるなよ外道!一介のサラリーマンとて一人の娘の父!貴様如き鬼畜にむざむざ娘をシャブ漬にされて堪るか!
待ってろよ?奈々子。明日から父さんはジム通いだ!あの外道に怒りの右ストレートをぶち込むまで父さんは諦めんぞ!!


北村祐作の日記より抜粋。
1月25日。
今日もいい天気だった。登校時に高須に会ったので一緒に登校した。
それにしても高須は意外に音楽に精通しているようだ。なんでも色んなパターンで曲を組んだMDを数種持ってるようだ。
その詳しいシチュエーションは明かしてはくれなかったが、お勧めを1枚貸してくれた。なんでもドライブ用だとか。免許でも持ってるのか?高須。
でも良かったぞ。まぁ礼を言っても受け取らないお前だ。俺もあまりしつこくは言わないさ。
良かったろ?と聞いてくるのは良いが、暗闇では止めた方が良いな、その仕草は。でもまぁ。
「ああ。確かにお前が「アレは歌詞が良いんだ」って言うだけの事はあったな」ていうとなんか恥ずかしそうにしてたのが印象的だ。
でもアイツに、皆にも聞かせてやるのか?って聞いたら静かに首を振って「一人で良いんだ…たった一人に聞いて欲しくて、ソレを創ったんだからな」と。
見てれば分かる。そのたった一人に、お前の手は届いては居ないんだな、高須。
俺は親友の想い人を知らない。でもせめて上手く行って欲しいと、今夜は願いたい。


櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
1月25日。
いや〜。やっぱりアニキ会長は凄いよ。
ウチの学校って野球部も男子ソフトも女子ソフトも有っていつもグランドの事では困ってた。
そしたらアニキが学校とか教委とか市役所とかに掛け合って、市営の野球場一つの占有許可を勝ち取ってきたの。
もちろん有料なんだけど、生徒会の予算内でなんとか治める額に交渉して、全てに納得させちゃった。
ホント、とんでもないお人だよアンタ〜最高。
放課後に生徒会室にグランドと球場のローテーションを持っていった。
お礼したら「勝ち取って良かったと思える位、頑張ってくれよな」だって。く〜!かっこいい!!
無論!頑張るぜ!!私の夢に向かって、まっしぐらさ!!


高須竜児の日記より抜粋。
1月25日。
ついにココまで来たか。思えば遠く苦しい日々だった。
今日生徒会室に放課後呼び出しを受けた。何かしたかと思ったが、俺が行くと生徒会室から櫛枝さんが出てくるじゃないか。くそ!なんで走っていかなかったんだ俺は!
が、まあいい。今の俺はそんなぐうたらな過去の俺すら許してやれるのだ。
生徒会室に入ると狩野先輩しか居なかった。俺を見ると「来たか」と言って先輩は窓際に立った。
始めは何かと思ったが「お前に聞きたい事がある」と来た。それは良いのだがどうにも要領が掴めない。
盆に水がどうしたとか時計がどうしたとか。俺が「それで何が言いたんでしょうか?」て聞いたら、少し怖い顔になったけど、多分、ようやく本題に入ってくれた。
つまり「一度は失敗した、筈のモノを追い求めて、お前はそれで何を得ようというんだ」と聞いてきた。あの目は真剣だった。
あの目が無ければ俺は気が付く事が無かったろう。誰よりも誠実で頼りがいが有って、皆にアニキと慕われてる存在が俺に偽らずに答えろと訴えてくる。
或いは俺がもう少し早く来てれば無かった話しなのかも知れない。そして遅れて来てもまた、俺には気付けなかったのかも。だが運命は俺に味方した。GJ運命!
この目と、この問いの向こうに、俺には櫛枝実乃梨の姿がはっきりと見えた気がした!1度の合コンの失敗で諦めるのか?と。諦めなかったところでどうなるのか?と。
俺と面識のあまり無い櫛枝さんには、こうして狩野先輩に託すしか無かったのだろう。北村には恥ずかしいだろうし能登では駄目駄目だ。OK。OKだ櫛枝さん。
俺は狩野先輩に言ってやった。「何もかも全てです!俺はソコにある全てが欲しい!」
無論、狩野先輩にだって役割がある。色々言ってきたが悉くを返したさ。だってそうだろう?
何度失敗しようが俺の何が失われようが知ったこっちゃ無い。それは俺の問題だ、櫛枝さんは変わらずソコに在る。だったら。
「その為に全部失ったって、手に入ればチャラですよ。きっとソコにはそれだけの価値が在る。少なくとも俺には」
先輩も納得してくれたのか、押し黙って窓に向かった。俺は狩野先輩の後姿に礼を言って、こんな仲介役を引き受けてくれた頼もしき先輩に無言で頭を下げた。野暮はなしだ。
去り際に「お前に手に入れられた方は不幸かも知れんぞ」と言ってきた。愚問ですよ、先輩。
もうすぐ聖なる2月14日が訪れる。あぁ、俺の人生最良の日が今日確かに近付いた。
俺は最大の功労者である狩野先輩に感謝しながら、今夜は眠るとしよう。


狩野すみれの日記より抜粋。
1月25日。
ふぅ。どうやら私の負けの様だ。
高須は私にはっきりと言った。私の全てが欲しいと。アイツは一度も私の視線から逃げなかった。
2度、3度と失敗したら?「失敗が怖くなくなりますね」
他の誰かと付き合うかも知れんぞ?「道順なんて関係ありません。最期に俺に辿り着けばそれで良い」
最期まで振り向かなかったら?「関係ないです。振り向くまで諦めない。いや、いつかきっと振り向かせて見せます」
たとえそれで全てを失うとしてもか?……か。
私の価値か…自分の価値は自分で決める積もりだったのだがな、私は。
それにしても随分と勝手に価値を付けてくれたものだ。
愚問か、ホントに愚問だな、高須。
「俺を選ぶってんならそれは選んでも不幸にならないって確信があるから選ぶんです。だから、俺達が不幸になるなんて、絶対に有り得ない!そんな男に、俺は成ります!必ず」
良いだろう、高須竜児。私達が不幸になる筈が無いと言うのならそれを証明して見せろ。そんな男に、成ってみろ……竜児。


高須竜児の日記より抜粋。
1月26日。
おかしい。何度かグランドをうろうろしてみたが櫛枝さんからのリアクションは無い。
どうしたんだ?照れてるのか?
うん!そうに違いない。
明日はもっと気を使おう。まったく、気の効かない俺でゴメンね櫛枝さん。

1月27日。
下校時、誰も居ない廊下ですれ違ったのだが……素通り?
あれ?

1月30日。
偶然に狩野先輩に会った。こないだの話ですけどと聞いたら行き成り腕を掴まれて廊下の隅に。なんと先輩は言った。
「あの時の言葉は預かっておく。私は見てるぞ?高須」と言われた。
なんて事だ!俺はソコまで狩野先輩に疑われているのか!!つまり櫛枝さんに俺はふさわしく無いと?
ふふふ…いいだろう。昨日の友は今日の敵。今日の敵は明日の友だ!
見ていてください狩野先輩!俺は必ず櫛枝さんにふさわしい男に成って見せます!!
はぁ、でもこれでバレンタインは無くなったな。


逢坂大河の日記より抜粋。
2月4日。
どうしよう。っここここ今年のバレンタインデーって何月何日だっけ?去年と同じで良いの?
今までは誰にもあげた事無いけど、今年は、その、北村君にあげようと思う。
幾らの買えば良いんだろう?4万円くらいで足りるのかな?でも手作りの方が…あぁ!どうしよう!!


木原麻耶の日記より抜粋。
2月7日。
う〜ん。今年はどうしようかと思う。去年とかは無視だったけど、まるおや高須君にはあげたい。
でも高須君はクラスも違うし、中々ねぇ。
まるおは同じクラスなんだけどなぁ…そうか!他の男子にも義理チョコあげれば良いのよね!
それでまるおにもあげれるし、まるおのだけにカードか何かを…でも高須君は?私はもうまるおなの?自分で分かんない…あぁ!どうしよう!!


木原奈々子の日記より抜粋。
2月9日。
あ〜あ。もう、なんでこうなっちゃうかな〜。
この前までは普通に高須君にチョコあげようと思ってたのに、彼があんな事言ってたら、普通にって感じじゃ無くなるじゃない。
いや、もちろん嫌いじゃないんだけど、てか、もしかしたら私だって…でも麻耶とか押しのけてって程でも無いのも確かなのよね、きっと…あぁ!どうしよう!!


恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
2月11日。
は〜。ねぇ竜。貴方は何処に居るのかな〜。
そりゃあ終われる身なんだし、そうそう逢える訳じゃないわよ?第一、2度しか逢った事無いんだし。
でもね、それでも逢いたい女心位は分かっておくべきよね、大人として。うん。
せっかく奮発して買おうと思ってるのにな〜…あぁ!どうしよう!!


櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
2月12日。
へいへいへい!!!買って来たぜチロルの山を!
君は何チロルだい?お〜!挨拶出来た君には3チロルを進呈〜!!
うんうん。やっぱチロルだよね〜〜はっ!!明後日まで持ってたら私食べちゃう?…あぁ!どうしよう!!


狩野すみれの日記より抜粋。
2月13日。
あぁ………どうしたものかな。


木原麻耶の日記より抜粋。
2月14日。
今日は結局、クラスの男子数人に義理チョコをあげた。まぁ同じ班とか係りとか、そういう人。
もちろん、まるおも含んでる。カードとかも考えけど、やっぱり辞めた、だってまだ私自身の気持ちが分かんないんだもん。
だから、まるお。今年はまるおも義理チョコだよ?限り無く本命に近い義理チョコ。
でも「ありがとう木原。いやぁ、今まで余り貰った事無くてな。かなり嬉しいぞ」って言ってくれた。
ありがと、まるお。少し報われたよ。
高須君には無いんだ。やっぱこうしちゃうと不自然だから。だから来年は、もっとし自然になろうよ、ね?高須君。


恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
2月14日。
結局は待ち人来たらず。ま、分かってたもんね〜だ。
でも仕方ないでは済ませる訳には行かないわね。そろそろ策を練りましょう。
第一あの人の名前も知らないんじゃ…そうよ!あのパンチに聞けば!
今度、あのパンチを探して竜さんの事を聞き出そう。
そうすれば逢える。あの人に、もう一度…。
待っててね、竜。さて、ナニワ金融伝見よっと。


狩野すみれの日記より抜粋。
2月14日。
今日は随分と校内が浮き足立ってたな。まぁ無理もあるまい。こういうイベントで盛り上がれるのも今の内だけだろうしな。
私は特にあげる相手もいないし積もりも無い。義理もな。
1枚幾らの義理など不要だ。
今日は特に処理しなければ成らない事案も無いし、早々に帰宅する事にした。
偶には店でも手伝った方が良いだろう。
相も変わらずお得意さんの、目付きの悪いウチの男子生徒が夕飯の買い物に来てたからな、偶々だ、チョコを一つおまけしてやった。
ま、今日はそれだけだ。


香椎奈々子の日記より抜粋。
2月14日。
色々考えたけど、今日は高須君にはチョコをあげなかった。ちょっとタイミングが悪いよね、今。
私達は多分、仲の良い友達だったから、もしかしたら高須君は期待してたかも。
前に話した事有ったもんね。未だかつて貰った事無いって。気が向いたら私があげるよって言ったら喜んでたっけ。
なんか思い出すと、やっぱりあげればよかったかな?って。でも、無理だよね、今は。
ほんと……貴方の所為よ?高須君。


522 日記。徒然に。。 sage 2009/05/17(日) 02:04:25 ID:Qzpzk8KN

逢坂大河の日記より抜粋。
2月14日。
きききき今日、北村君にチョコをあげた。
ちょ直接なんて無理だから下駄箱に入れたけど、ちゃんと受け取ってくれるかな。
色々考えたけどやっぱりこういうのは手作りが良いって本に書いてあったから、初めてだったけど…形はそれなりに上手く行ったと思う。
失敗し過ぎて3万円くらい掛かったけど、でも、作れたもん。
こうやってカード書いて、その、もし。、ね。良かったら付き合って下さいって………書いたカードがなんでココにあるの???
……………来年また頑張ろう


香椎奈々子(父)の日記より抜粋。
2月14日。
うんうん!毎年恒例の奈々子の手作りチョコレート。
ホントに奈々子は優しい子に育ってくれた。それだけに悲しい。なぜ奈々子があんな外道に蹂躙されね、いや、今日は止めよう。
これから先、あと何年、奈々子はこうして俺にチョコをくれるんだろうな。
いつかこのチョコも俺ではなく、アイツの選んだ相手に渡されるんだろうな…こうやって高須君へ、なんて書いたチョ………奈々子が慌てて部屋に飛び込んで来て、きのこの山と取り替えてった。
そうかいそうかい。奴は高須君と言うのかい……くっくっく、ふはははは!!やあ高須君!海で石でも抱かす君!!ははははは!!!


櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
2月14日。
いや〜〜。配った配った!チロル祭りは健在だよ!
文化の極みだとは思わないかね生徒諸君!
でも、いつか私もチロルじゃない、ホントのチョコを渡したい。それはきっと先の話。
できるなら良い話になると良い。
そんな良い話に出来る人に、私は巡り会いたい。
今日はそう、思った。


高須泰子の日記より抜粋。
2月14日。
今日は〜。来てくれたお客さんに、やっちゃんからチョコレートを渡す日なのだ〜。
いつも来てくれてありがとうの感謝の気持ちを一杯い〜っぱい詰めるでがんす。
だから今日は皆が笑顔の日。
毎日こうだといいね〜、竜ちゃん


高須竜児の日記より抜粋。
2月14日。
コレはどう言う事だ。まさに非常事態だ。
俺の下駄箱にチョコレートが入っていた。何処から見てもチョコだ。エックス線もガンマ線も必要ない。これはチョコレートと言われる代物だ。
差出人は無い。無いが、コレが俺の下駄箱に入っていたと云う事はつまりは…俺に!!
おいおいおいおいおい!!!本気なのか?自分を大事にしてるのか?君はって落ち付け俺!クールにクールに
だが、誰かが分からん。そもそも俺にチョコなどくれる人に心当たりなど無いのだが……!そう一人居た。
確か前に何気ない会話をしたのを覚えてる。コレは香椎さんだ、と思った。
香椎さんとは何故か最近会う事が少なくなったが、それでも間違いなく、俺の親しい友人の一人だ。
ありがとう。香椎さん。
俺は香椎さんに感謝の思いと、お礼の言葉を心の中で唱和しながらチョコを少しかじったのだが。
脳天から爪先に電気が走った!というか、落雷に等しい衝撃に違いない。これは……なんだ?
一体どう云う化学反応を起せばこんな味が生み出せるんだ!お前の身になにが有ったと云うんだKAKAO!!
コレはもう、一つの武器だ。いや、兵器だ。
ちょっと待ってくれ。この物体が生み出され送り込まれた経緯は分からん。だが、コレが香椎さんの物で無い事は確かだ。
彼女の料理の腕は大体察しが付く。こんな人外魔境の定番料理を作る人じゃない。だとすれば一体……あぁ!!!
そう、俺は思い出してしまった。ある光景を。アレは入学したての親睦レク。違うクラスの違う班で、カレー鍋に何かを入れようとしているのを班の人達が必死で止めていたあの光景を。
あの時確かに思ったものだ。きっとあの人の味覚は班の人達からすると有り得ないのだろう、と。だが問題はその人物だ。
櫛枝さん……まさか極度の味覚音痴だと言うのか!!く!涙が……いや、泣いてる場合じゃない!
だとすればコレは櫛枝さんから俺へのバレンタインチョコレート!!おいおいおい!!!立ってるじゃねぇか櫛枝フラグ!!だが…くっ!チョコが俺の死亡フラグに見えやがる!
試しにもう一口喰ってみたが……ふっ、時間が10分程ワープしたぜ。
ぬぅぅぅ。どうする?高須竜児。この櫛枝チョコを喰い残すなど許されん!断じて有っては成らん行為だ!行為なのだが、コレは本気で命に関わる。本気と書いてマジだ!
たった2口で時を駆けたぞ?この大きさを…なぜ普通の板チョコサイズがこれ程デカク見えるんだ。櫛枝さん、やっぱ君はすげぇ!
しかし、このままでは……どうする。どうすれば、いいんだGOD!?
だがその時俺の脳裏には櫛枝さんの笑顔が写った。どこかで、何かの歯車が、しっかりとはまった気がした。
そうさ、何を悩む必要がある?櫛枝さんのチョコで逝けるならそれはむしろ本望だろう?高須竜児よ。
もし15日のコレを書けなかったとしたなら、俺はもうこの世には居ないだろう。だがコレだけは記そう。

後悔は無い、と。


2月15日。
櫛枝さん。大橋総合病院の個室のテレビは有料だよ。
明日には退院出来る。
大丈夫。ありがとうと笑顔で言える。きっと。





つづく。