竹宮ゆゆこ総合スレ SS補間庫
   

 

日記徒然に。。。3




高須竜児の日記より抜粋。
12月28日。
う〜ん。既に大掃除が終わってしまった。年に一度のビックイベントなのに我が家の狭さが恨めしい瞬間だ。
冬休みに入って、能登が合コンをやろうと何度か言って来てる。
行った事は無いが興味はある。明日会って話をする事に成った。
だが俺は櫛枝さん一筋だ!ほんの社会見学なんだ。きっと彼女は分かってくれる。
そう信じよう。まぁ俺の存在を知って貰う事の方が先だが。

12月29日。
どうやら合コンは来年の15日らしい。ウチの学校の女子だという。
おいおい、俺が行って大丈夫か?怖がらせるだけなんじゃないかと思ったら、どうやら俺が行く事は向こうも承知らしい。
てことは怖がられて無い?なんか嬉しいぞおい!
初詣には神様に奮発するとしよう。しかしだ。
俺には櫛枝さんが居る以上合コンで上手く行く訳には行かない。まぁ心配する事も無いかモテた事無いしな、俺。
不味い、自分で凹んで来た。もう寝よう。


逢坂大河の日記より抜粋。
12月30日。
今日は大掃除をしようと思って、徹底的にやってくれと業者に倍額払った。
見違える程綺麗になった。まぁ金額分の事はあるわね。
みのりんに合コンに誘われたけど断った。だってなんか馬鹿らしいし、鼻の下伸ばしたエロサル見たら問答無用で殴りそうだもん。みのりんを困らせたくない。
そうそう。みのりんと初詣の約束をした。そういえば小学校時以来初詣なんて言ってない。
服どうしようかな。着物着ようかな。ちょっと悩む。


櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
12月30日。
大河に合コン断られた。私も乗り気じゃないんだけどさ、北村君がどうしてもって言うから女子ソフトの面子で集めたけど、出来れば大河には、もっとこう云う場に出て欲しかった。
少しでも、その足を外に向けて欲しいと思う。
ま、15日は軽く遊んで終いにしよう。北村君もそれでよさ気な事言ってたし。
彼をせっついた能登君って人には悪いとは思うけどさ。
きっと私はまだ恋愛をしないと思う。他にもっと大事な事が有るから。


香椎奈々子の日記より抜粋。
12月30日。
麻耶は田舎に家族と帰省で16日に帰るそうだ。なんか一気に冬休みが退屈になった。
今日はゴロゴロ。明日も精々が年越し蕎麦を作る位かな。
ウチはお父さんと二人だし、正月もそんなに騒ぎ立てる事も無い。
と思ってたけどチョッと待って!ウチが親子二人で味気ないって事はもしかしたら高須君も?
何げにメールしてみたら案の定、特にする事も無くゴロゴロしているそうだ。
「なぁ香椎さん。良かったら一緒に初詣にでも行かないか?」彼からのメールが来て3分後。
「考えとくわ」その3秒後「行きましょう、高須君」
お父さん。年越し蕎麦は緑のたぬきね。何も手に付きそうに無いもの。


木原麻耶の日記より抜粋。
12月31日。
やっぱり長野は空気が良い。寒いけどね。
1月中旬まではウチは毎年お爺ちゃんの家に来てる。今年もそう。
奈々子やまるおと一緒に年末年始を過ごしたかったけど、家族だって大事だもんね。
まるおは2日から家族で北海道に行くって言ってた。どうせスキーに行くなら長野に来ればいいのに。
高須君とは何も話してない。奈々子が言うには彼は特に変わらずゴロゴロしてるらしい。
まぁそれでも家事全般をこなしてるんだから、私達よりは忙しく動いてるんだろうけど。
最近思う。私は何故彼に惹かれてるんだろう?そもそもホントに惹かれてるんだろうか?
特に話もしない他のクラスの男子を、気にする理由はあまり無い気がする。
彼と離れたこの機会に、少し真剣に考えてみようと思う。


櫛枝実乃梨の日記より抜粋。
1月1日。
明けましておめで父さん!
大河との初詣は明日になってしまった。大河はどうやら朝方までゲームをやってたみたいで何度起してもすぐ寝てしまう。
仕方が無いから「明日行こうね」とメールを打ってマンションを後にした。
夕方からは家族と初詣に出掛けた。この街に大きい神社は一つだから誰かと会うかと思ったら北村君に会った。
今年もよろしくね、北村君!
部活のみんなにも会って、なんかソフト部って気が合うのか結構な人数が揃ってたら、神社雇いのカメラマンさんが一枚写真を撮ってくれた。
記念に部室に飾ろうって話した。


香椎奈々子の日記より抜粋。
1月1日。
新年明けましておめでとうございます。
今日はなんか良い一日だったかな。午前中に高須君と待ち合わせて二人で神社へ初詣に行ってきた。
高須君の和服姿が似合ってた。彼に言わせれば正月といえば着物らしい。私も着物にすればよかった。
神社に入った所で、ふ、と気配を察知。振り返ればお父さんが尾行していた。高須君にちょっと待っててと言って私はお父さんを捕獲。
正月料理は抜きに決定。
だいぶ時間を取ってしまって申し訳ないことしちゃったけど、高須君は気にしないって。ホント、彼が怒ることはどんな事なんだろう?
でもなんか待ってる間にオミクジとお参りはしちゃったみたい。ちょっとむくれちゃったかな。そしたら行くぞ、って。彼はまたオミクジとお参りをしてくれた。
2度やれば効果も2倍だと笑ってた。正月早々怖い笑みだったけどもう慣れたかな。
高須君は大凶を引き当てた。初めて見たわ。彼は呆然としてたけど無理も無いわね。
なんか神社に雇われてるって云うカメラマンさんが一枚写真を撮ってくれた。高須君はいいって言うから私が貰った。
今私の部屋にはその写真が飾ってある。
どこか照れくさそうにしている高須君と私。私ってこんな笑顔で撮った写真有ったっけ?
ふふふ。今年は良いお正月だった。


恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
1月1日。
また年が明けた…もう29回目ともなると新鮮味も失せるわね。
実家の母からまた探りが入った。どうやらまたどッかのお節介さんが大きい写真を持ち込んだ様だ。
大体、近年は私くらいの年で独身なんて普通じゃない!まったく世情に疎いというかなんと言うか…だめだ、正月早々に落ちそうだ。
初詣?どうせ凶しか無いオミクジなんて引くもんですかい。あっと!昨日借りてきた仁義無き戦い見なきゃ!
今夜も徹夜だわ〜。ふふふ。


狩野すみれの日記より抜粋。
1月1日。
謹賀新年!
まったく正月早々どういう積もりだ。
朝から家族で初詣に出向いたが、どうも商店街の人と会ったらしくいきなり独りになった。それはいい。
高須に会った。人の事は言えないが奴もどうやら独りの様だった。それにしても中々に和服の似合う奴だ。
似合うじゃないか。と言ってやったら「先輩もその着物、お似合いですよ」だと。ふん!当たり前だ。ええい!笑われたのが腹立たしい。
「ま、正月に着物は一種の正装だからな」といった筈だ私は。よく覚えてないが……
ついでだし、お参りとオミクジを付き合わせた。それにしても、私の小吉も気に入らないが、どうすれば大凶なんて引けるんだアイツは?
確か1・2枚しか入ってないのが慣例なのだが、ある意味強運な奴だ。ま、それでも木に括ればそれで問題ないからな。
私の着物の袖を気にしてアイツが私のくじも括ってくれた。そんなに気を回さなくてもとも思うが、悪い気はしないのが不思議だ。
カメラマンが写真を撮ってきたのには驚いたが…コレは私が回収した。こんな写真は人には見せられん!
そろそろ親父達の話も終わる頃だろうと別れたが、際にあいつが「今度、両親に会いに行きますから。やっぱりケジメはキチンとしないといけませんし。挨拶もまだだったし気になって」と……
チョッと待て!気が早いだろ!一応「そのウチにな」とだけは言っといた。てか断れよおい!
なんか変な正月だったが、偶にはこういうのも良いかもな。随分楽しそうじゃないか?写真の中の私は。


高須竜児の日記より抜粋。
1月1日。
う〜ん。めでたい。
初詣。能登に断られたし北村も無理だったから独りで行こうかと思ってたら香椎さんが付き合ってくれた。持つべきものは友人だ。
香椎さんは随分かわいい格好をしていた。う〜ん。俺なんかと一緒では迷惑ではなかったろうか?まぁ変なナンパの露払いになる自信は情けないが有りまくりだからな。
それで役に立ったと言う事で勘弁して貰おう。
神社に着くなりどうやら知り合いを見つけた様で「ちょっと待ってて」と言って消えてしまった。ま、大きな神社はココだけだしな。知り合いにも会うか。
能登は来ないみたいだし、俺が見かけるとしたら北村くらいなんだが…!!櫛枝さんも来るんじゃないか?!と辺りをキョロキョロ見回したら、狩野先輩が居た。
どうやら先輩も一緒に来てた人が知人を見つけたらしい。ご同類と言う訳だ。
しかし先輩の着物姿はとても良かった。思わず似合うと言ったのだが「べ!別にお前の為に着たんじゃないんだからな!」と捲し立てられた。
そんなに強く言われなくても分かるんだが。
ついでだからとお参りとオミクジを一緒にと言われた。俺は香椎さんと来てるんだが、まぁ先輩も一人では味気ないだろう。付き合った。
大凶だった。しかもその後で香椎さんとも引いたがまた大凶。死亡フラグでも立ったのか?俺。
なんかカメラマンが居てバシバシ写真を撮っては渡してくれるんだが、1枚100円とはこれ如何に。
香椎さんには渡してあげたのだが、狩野先輩は自分で持って行ってしまった。何も先輩が払う事無い。ココはやはり俺が払わねばならんだろう?
「今度料金払いに行きますから。やっぱりケジメはキチンとしないといけませんし」とは言った。
たかだか100円の事ではあるがな。男としてソレくらいの甲斐性は持ちたい。クリスマスの侘びもある。この場でも良かったのだが先輩が
「そのうちにな」と言って行ってしまった。100円とはいえ、受け取って貰うのは骨が折れそうだ。
結局いつもよりも多少賑やかな正月で終わったか。さっき能登と北村に明けオメメールはした。あぁ、今日有った事でも書いてやれば良かったかな?あいつらも暇してるんだろうし。ま、いっか。もう寝よう。



能登久光の日記より抜粋。
1月1日。
新年オメ。
な〜んか世間は初詣で正月気分らしいが俺にはあまり関係ない話だったな。
30日に高須に初詣に行かないかと言われたが野郎二人で行ってもな。断った。
高須には悪い事をしたな。アイツが学校外で行動を共に出来るのは俺か北村位だろう。北村はどうやら家族で初詣らしいし、ま、お互い暇な寝正月を楽しもう。
楽しみは合コンまで取っておけ高須!お前に損はさせんぜよ!と言う訳で俺は終始三国無双オンライン三昧の正月な訳だが。
武井からメールが来た。どうやら奴は修羅になったらしい。負けてたまるか!


木原麻耶の日記より抜粋。
1月1日。
アケオメコトヨロ!
夜になってようやくメール規制が取れた。ほんとうざい。
いつもと同じお正月。この年でもお年玉が貰えるから田舎は好きよね。
奈々子にメールしたら今日は高須君と初詣に行ったみたい。
今更ながらなんだけど、もしかして奈々子って高須君の事?前は本人は否定してたけど。
でも考えたら奈々子がメールする男子なんて高須君位しか居ないじゃない。私は、だったらどうするんだろう。
別に私が高須君を好きって決まった訳じゃないし、でも気になるのは確かだし。
ああ!もう!!新年早々なんなのよ!


逢坂大河の日記より抜粋。
1月2日。
起きたら2日に成ってた。
?1月1日は何処に行ったの??
みのりんと初詣に行ったけど、不思議な正月だった。


香椎奈々子(父)の日記より抜粋。
1月2日。
既に4食カップラーメン。奈々子の機嫌が悪い。余程初詣を尾行したのが怒りに触れたらしい。
しかしあんなにおめかしされると父としてはだなぁ。
それにしてもあの男。どうみても神社の縁日を取り仕切る侠客では無いか!
奈々子に悪い虫でもと思ったが、まさかモスラ級の怪虫とは!どうする?殺るか?いや、むしろ殺られそうだな。
スイス銀行の56513に入金でもして凄腕スナイパーに狙撃でも依頼するか?もしくは掲示板にXYZと書き込みを…
なんにせよ手を打たねば成るまい!
さっき奈々子が買い物から帰って来た時、袋の中に赤いキツネが見えた。明日はうどんか。



北村佑作の日記より抜粋。
1月6日。
明日で北海道ともお別れか。中々楽しい旅行だったな。
それにしても帰ったら櫛枝や能登と打ち合わせをしなければな。まぁ俺は行く積りは無いが、高須が来れるのは喜ばしい事だ。
まだまだアイツに関する誤解はあるからな。いい機会だと思う。
これを機に少しでもアイツの良さが広まってくれれば良いのだが。
そう言えば高須の好みは聞いてなかったな。今度聞くとしよう。


高須竜児の日記より抜粋。
1月8日。
とととととととんでも無い話を聞いた!
なんと合コンは女子ソフト部との合コンと言うじゃないか!そして向こうの幹事は櫛枝さん!!
待てよ!幹事って事は出席するんだよな!無効な漢字の間違いって事は…落ち着け俺!な分けないだろう!。
それにしてもでかしたぞ能登!北村!お前達が親友で俺は最高に幸せだ!!
いかんな、今から興奮してきた。まぁ落ち着こう。すていすてい
決戦は来週だ。能登の奴め。そうならそうと3ヶ月位前には言っといてくれれば良い物を。いや、奴を責めるのは止そう。功労者には違いない、うん。
いかん!金!!幾ら有れば良い?貯金は…87万か、足りるか?いやしかしこれは今後の為に。だがココで役目を果さねば。いやしかし…
落ち着こう。ステイステイ
なんだこの幸せ感は!そうだ、俺はこの日の為に今まで不毛な青春を送って来たのだ!はっ!服!!
やはりココは若者受けするファッションで!いや、俺も充分若者じゃないか!自信を持て、俺!!
プランだ、プランを立てよう!全ては15日の為にだ!あぁこんな物を書いてる場あ


香椎奈々子の日記より抜粋。
1月11日。
今日街で高須君を見かけた。声を掛け様かと思ったけど、出来なかった。
高須君は走ってた。でもなんで鋲付きの革ジャンと革パンツだったんだろう?
皆が怯えていた。さっきメールしたら声を掛けてくれれば良かったのにって。私にはハードルが高いと思うんだけど。
どうだった?って来たから、あの格好は止めた方が良いと言って上げたんだけど、返信が「nfbdu32q9r hr@yu 90」と滅茶苦茶になった。ごめんね高須君。

1月12日。
今日も高須君を見かけたけど、髪が金髪になってた。ほんとにどうしたんだろう?
何か悩みがあるなら聞くよ?とメールしたら「さんきゅ」とだけ。
ちょっと心配になってきた。

1月13日。
スーパーで高須君に会った。……高須君、だよね?
なんかサラリーマン見たくなってた。あのテカテカの7:3は無いと思う。
帰りに話を聞いてみたら、明後日に合コンに行くらしい。それでもうどうしたら良いか判らなくなってるみたい。
初めてで緊張してるのは分かるけどそれはちょっと…って言ったら真っ青になってた。時間無いもんね。
クリスマスの時みたいな格好で良いんじゃないかとアドバイスしたら凄く嬉しそうに笑ってくれた。
最近はかなり彼の笑顔になれてきたわね、私も。
それにしても…なんか北村君にはムカついた。あと高須君にも。だからご免ね。
多分、あの格好だと皆に怖がられると思うけど許してね。ちょっとの意地悪くらい。許してくれると思うから、ね。


高須竜児の日記より抜粋。
1月14日。
おお!もうこんな時間だ。もうすぐ合コンの日付と成る。
かなり困惑した一週間だったが、香椎さんのお陰でなんとかなりそうだ。ありがとう香椎さん!
女子の見立てなら間違いないだろう。
それでも黒のスーツと言うのは気が引けた。迷っていたら泰子が違うスーツを出して来た。白地に黒線の入ったものだ。
どう見てもチンピラ風だが、まぁ俺が着れば所詮一緒だ。香椎さんを疑うな高須竜児!明日はこのスーツにしよう。
俺の目が危険だと言っていたのも解決済みだ。薄いサングラスを泰子が持ってた。伊達だがな。
……良いのか?香椎さん。なんかもの凄い悪い人間が鏡の向こうに居るのだが……いや、疑うまい。全ては櫛枝さんの為だ。
もう寝よう。明日は早い。

1月14日。
まずい。かれこれ1時間。一向に眠れん。このままでは不味い。
忘れるところだった。去年のクリスマスに万が一櫛枝さんに会えたらと思って買っておいたネックレスを持っていかねば。
分かってる。そんなに都合よく仲良く成れるとは思っていない。でも合コンとはつまり男女が仲良くなる為の集まりだろう!
ならば準備しておいて不味いという事もあるまい。これを内ポケットに忍ばせて……なにやら物騒なモノを懐に忍ばせている様にも見えるが…いや!櫛枝さんの為には仕方がないだろう。うん。
お!!まずい!早く寝よう。


櫛枝美乃梨の日記より抜粋。
1月14日。
させと、明日は合コンだねぇ。まぁ私はそう云うのは苦手。もっとも、苦手ってだけじゃダメだよね。
でもきっと私はまた軽く訳分かんない事言って皆を煙に巻く。
誰にも私の中には入らせないんだと思う。
不安なんだね、私は。きっと皆も不安だけどそれを越えて来る。私にはまだ無理だ。
でも少しづつ越えていこう。サンタに誓ったしね!
だからきっと、少しづつ。


木原麻耶の日記より
1月14日。
今日奈々子に聞いた。どうやら明日は高須君は合コンらしい。ちょっと信じられない。
ソレまでの高須君のテンパリ振りはかなりのモノだったらしい。奈々子は大笑いしてた。
ま、そんな経験とか無さそうだもんね〜。でもちょっと釈然としないのは乙女心だよね。
でも奈々子もたいがい小悪魔だよね。テンパッてる高須君に衣装のアドバイスしたみたいだけど、それがもう!
白スーツに黒シャツ。薄めのサングラスに黒のコート。エナメルシューズに出来れば白いマフラー垂らして。ってそんな奴居ないって。
まぁ奈々子も幾らなんでも高須君もソコまではしないだろうって笑ってた。
でもそんな高須君の格好で合コンに行ったら?あはは。やっぱり二人で笑ってた。
見てみたかったな。高須君がどんな格好か。ま、25%位はアドバイス聞いたりして。
そんな彼を思い浮かべて、ちょっと楽しくなった。



高須竜児の日記より抜粋。
1月15日。
…………なんでこうなるんだ………
現在23:58。長野にてコレを書く。何故?駄目だ、整理しよう。
朝は予定通り家を出た。服装はバッチリだ!香椎さんには感謝の言葉も無い。100%アドバイス通りに出来た。泰子は何枚も写真を撮りやがった。
俺の中では、どう見ても3代目を継いだばかりの若親分にしか見えないが、いや!香椎さんを疑うな!
確かに道を歩いていても、会場のある町まで電車に乗っていてもかなり不審がられたがいつもの事だろう。OKOK。
俺の胸には櫛枝さんに渡すネックレスもある。金は10万!奮発したぜ!どうしても零れてしまう笑みは仕方が無いだろう。
だが仕方が無いでは済まされない方々が駅で待ち構えていた。警官&刑事さん。電車の運ちゃん手廻し良すぎだろ?
「ちょっと形だけなんで時間いいかな?」と優しく言われても、こう10人に囲まれては優しく感じられないな。
ふっ。だがコレすらも今日の俺には織り込み済みだ。分かってるさ神様。櫛枝さんへの障害だろ?OKOK。
俺のポケットには生徒手帳や健康保険証。住民票や泰子の名刺。あまつさえ学校行事でとったスナップまで多数持参だ。どの様な状況からでも俺が普通の高校生であると証明するのに15分と掛かるまい。その為に1本早めの電車にも乗った。
すべて計算通り!グッジョブ俺!……ココまでは、な。これから先が俺には分からん。
「わかりました」とついて行こうとした瞬間、行き成り白い煙と言うか、これは消火器なんだが、それが俺達を覆いつくしたんだなこれが。
で「こっちよ!竜さん!」って俺の手を引いて走ったのは、どう見てもA組の恋ヶ窪先生だった。はい?
なんかテンパッてる感じの先生が「ココに隠れて!」って俺を突き飛ばしたのは列車のドア。その後先生は「あっちに行きました!」とか言ってた。
どうやら逃がしてくれようとしたらしいが、「長野行きゆりかもめ。はっしゃいたしま〜す」って!長、ゆりかもめって!!
遅かった。ドアは閉まった。出せと叫ぶ俺に向けた先生の笑顔が苦々しい。いつの間に恨みを買ったんだ俺は?優雅に手を振るあの姿と共に、櫛枝さんが遠のいていく。
もちろん切符なんて持ってない。車掌に見つかりどうしたもんかと困り果てていたら、どっかのおばさん。いや、お姉さんと言った方がいいな。が「私の連れよ」と助けてくれた。
一言で車掌が引き下がるとは凄い人だ。それからその人と一緒に座って、まぁ事情を聞かれたりしたから話してた。
どうせ長野までノンストップだ。もうどうにも出来ないし助けてくれた人に問われたら答えるのが筋だろう。で、話てたら「で?先生を恨んでるわけだ」
と言った。なんで?
「いや、別に、結果はどうでも助けてくれようとした訳ですし、恨んではいないすけど?」なんでか笑われた。でも「うん!君、合格」だとさ。何にだ?
長野に着いたら駅にはソレはもう素晴らしい数のお巡りさんがお待ちになってたな。ま、この車両に逃げ込めばココで降りるしか無い訳だしな。結局、警官10人振り切っての逃亡か。こいつは時間が掛かりそうだ。メールは降りる前にしておこう。
釈放された時はもう22時を過ぎてた。帰りの特急なんてもうない。なんでか切符はあのお姉さんがくれた様だ。俺が無罪だったら渡してくれと預けたらしい。でも誰だ?あの人?
なんとか宿を見つけ様としたが俺の姿を見るなり満室になるようだ。長野は寒いぜ。色々と。
で、これまた不思議なんだが、なんでか木原さんが居た。なんでだ??よく分からんが、木原さんが公園のベンチで泣いてた。
どうも木原さんは弱い子の様だな。こんなに可愛くて弱い子を何故回りの人は放っておくのか理解に苦しむ。木原さんも合コンでもして彼氏でも…合コンの言葉で俺が泣きそうになったな。
しかし放ってもおけないので話しかけたら、木原さんは大泣きして抱きついてきた。あぁ、周りの目が痛い。ほら、誰か電話してるし。
5分と経たずに俺にとってはオリコン1位よりも今日一日聞きなれた音が白黒ツートンの赤灯カーと共に登場。誰が高校生を泣かせてるヤクザなジゴロだと?30分前に別れた刑事と再会を果たした俺は、彼の配慮で宿直室に泊めてもらってる。
初の長野で顔見知りに成れたのが刑事さん一人とは……長野なんて大嫌いになりそうだ。
とりあえず明日は帰れるが、能登よ。よもやとは思うが櫛枝さんとアドレス交換なんかしてようものなら、今夜の内に携帯と別れを惜しんでおくんだな。
それにつけても………なんでこうなるんだ?


恋ヶ窪ゆりの日記より抜粋。
1月15日。
あぁ!今日偶然に竜さんに会えた。でも再会を喜んでる場合じゃなかった!彼ったら警官隊に囲まれてたの!どうしようって思ったけど…不思議ね。私もう動いてた。
ほんと、どうしちゃったのかな、私。
近くに有った消火器を使って煙幕にして彼を引きずり出した。私だって知って彼ったら「なんで?」って。ふふ、わからないのよね?私にも。
彼を開いてる列車のドアに隠して警官達を明後日の方に誘導した。タイミング良かったわ。丁度その列車が動き出したもの。でも彼は「ゆり!」って。
覚えててくれたのね、私の事。ふふ、心配して叫んでるけど、平気よ?
「私はアナタの相棒ですもの…ね?竜」
あの顔はきっと勝手に残った私に怒っているのでしょうね。でも平気よ、貴方さえ無事なら私は平気。
それに私だって逃げきったわよ?相棒だもんね、私は。
また会いましょうね?竜。
そして貴方を撃ち落して見せるわよ?20代最期の私の恋だもの。


北村祐作の日記より抜粋。
1月15日。
どう言う訳か高須からメールで合コンに来れない旨の知らせが来た。何故か長野に居るらしい。なんでだ?高須。
返信は来なかったが、きっと何か事情があるのだろう。
合コンの方はやむを得ず俺が出て人数を合わせた。
まぁ特に何がまとまる訳でもない。皆で食事してカラオケ行って、それで終わりだ。
だが櫛枝よ。お前はソレでいいのか?いや、俺も人の事は言えんか。
やっぱ、難しい事だらけだな、高須。


木原麻耶の日記より抜粋。
1月15日。
ビックリした。超驚いた!
私は最近ちょっと変で、色々考える事とか有って、それで高須君が合コンするって聞いて、訳が分かんなくなった。
奈々子はどう思ってるの?私は?高須君はなんで合コンに?私だってこんな所にいなければって。
きっと自分でもおかしい位周りが見えてなかったのね。なんか家族の前で爆発して、お父さんにぶたれた。
もう、なんか疲れたな……独りで公園に居たら、本当に独りになった気がして、なんか泣けて来た。駄目駄目だぁあたし。
そしたら誰かが前に立って、いつか誰かにされたみたいに私の頭に手を乗せて……
「やっぱり木原さんはいつも泣いてるよなぁ」って……高須君が微笑みながら私の頭を撫でてた。
なんで?って思う前に、抱きついてた。泣きながら、抱きついてた。彼は驚いてたけど離さない。
どうしてこの人はいつも私の困った時に居るんだろう。どうして泣いてる時に居るんだろう。
こう見えても私は明るい人間で通ってる。みんなそう思ってる。
でも高須君は違う。この人には、私は弱くて泣き虫で…でも、居てくれたんだよ、君は。
その後の事はよく分からない。なんでか高須君はパトカーに乗せられてどっか行ったし、騒ぎで駆けつけたお父さんは私に抱きついてきた。
やめてよね!子供じゃないんだから!でも、凄く心配してくれて、嬉しかった。
明日向こうに帰る。帰ったら高須君に御礼を言おう。そして、奈々子に言おう。
私は、まるおと高須君。どっちも選べない位、どっちも好きだって!
手加減しないからね?まるお!奈々子!そして、高須君!!


川嶋安奈の日記より抜粋。
1月15日。
今日は随分面白い子に会った。本当に、面白い子。
聞けば喜劇ね。その眼が気に入って車掌から助けて上げた無賃乗車の高校生。高須君。
どう転んだらあんな馬鹿な事になるのかしらね。ほんと、いい暇つぶしになったわ。でも、彼は良いわね。
先生を恨まないかと聞いたら、?って顔して否定した。責任を誰かに預けない。なるほどね、面白い訳だ。
駅に付いて警官隊を見てやった事といえば、合コンへの不参加の連絡だけ。ま、見送ってあげたけど、彼は落ち着いてた。ホントはモノホンだったりして。
私が最期に彼に聞いた言葉。「コレが映画なら、貴方は自分にどんなキャッチコピーを付けるのかしら?」一瞬きょとんとしてたわね。まぁ無理ないけど。
別に答えなんて期待して無い。状況もあれだしね。でもドアが開いて、何十人は居る警官隊の中に独りで進んでいく前に笑って言ったわね
「決まってますよ。俺はいつでも『推定有罪』です。だから笑って歩いていきます」ってさ。
だからもう一度言ってあげた。「やっぱり貴方、合格よ」
意味分かったのかしらね?でも応えた笑みは良い画になってたわよ?
ふふふ。大橋高校、か。さっき資料を取り寄せとく様に言っといたし、明日には色々分かるでしょう。
亜美はまだ頑張れるかな?あの子もストーカー如きでまだまだ小者だけどね、これなら丁度良いわ。
精々もって3・4ヶ月ってトコでしょ。ま、目一杯背伸びして、私の所に泣き付いて来なさい亜美。貴女にとっておきの逃げ場所を与えてあげるわ。
その日まで、待っててよね?高須竜児君
ふふふ。ほんと、こんな楽しい一日は久しぶりだった





つづく。