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無題
- 田村にお弁当作ってるのは楽しいんだけど、最近はおかずのレパートリーが増えなくて困ってるのよね…
買い物カゴを手に、スーパーの陳列棚を覗きながらゆっくり歩く少女、相馬広香は明日のお弁当の中身をアレコレ考える。
「この前のハンバーグは反応良かった見たいだけど、そう何回も一緒じゃあちょっとね…」
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「揚げ物もいいけど、やっぱバランスよく食べてもらいたいし…」
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「でも、男の子って野菜より肉だよね?… どうしよう?」
「ここままじゃまた同じおかずのローテーションになっちゃう…」
カゴの取っ手の金具部分を指先でもち、両手を後ろに揃え、トコトコとスーパーを一周する。
ここのスーパーは店をグルッと回ると入り口に戻るのではなくそのままレジにつく様になっている仕掛けだ。
あと少しでレジに着くというところで相馬は立ち止まる。
「あの人、前の人を睨んでるわ…。そんなに混んでもないし…全くせっかちな人ね」
目の前にはレジに並ぶ数人の姿。並ぶといっても二、三人程度で大して時間もかからない。
それなのに前の人をまだかまだかと、むしろ蹴って退けてしまうんじゃないかと思うほどの目つきの人がいる。
「しかも、制服!? にしては買い物カゴには菓子類じゃない…」
その怪しい三白眼の高校生の後ろに並び、少し観察する相馬。
「次の方どうぞー」
「はい」
うわ!近くで見るとさらに怖い目つき!今店員さん殺すのかと思ったわ…てかこのまま私と目が合ったら出口で待ち伏せされて襲われるんじゃ?
やだよー!助けて田村ー!!
「あ、袋は要りません」
え?
「あ、あとポイントカードありますから」
んんっ!?
外見ヤンキーにしてはずいぶん主婦くさい言葉がでてきたわ…
それに、買い物の内容って大分私と似てる?あ、その卵安いしおいしいよね。
「ありがとうございましたー。次の方どうぞー」
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「あ、はいはいっ!」
つい目の前のヤンキーに目がいってしまった。もしかしたらお使いだったのかな?
それにしては返ってきたポイントカードを見てるときの目がヤバかったわ。
明日田村に話してみよーっと。
「あ、ポイントカードあります。あと袋は要りません」
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