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よゐこの著作権法
「なぁ、川嶋。俺たちみたいなキャラを援用しての二次創作ってのは、著作権の侵害にならねぇか?」
「高須くん、著作権法の保護対象は何だか分かってるのぉ?」
「いや、俺は法学部じゃないから、知らねぇ…」
「ダメじゃない。著作権法は、弁理士試験の一次の試験科目の一つでもあるんだからぁ。そのくらいのことは、常識だと
思って理解してなくちゃ…」
「俺を貶すのはいいけど、著作権法の保護対象は何なんだよ、結局」
「著作権法の保護対象は、思想または感情の創作的表現であって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの
なのよ」
「じゃぁ、キャラを流用しての二次創作は、著作権法に違反するんじゃねぇのか?」
「文学のキャラクターはアイディアレベルの存在で、アイディアは、さっき言った創作的な表現ではないの…。だから、
文学のキャラは著作権法の保護対象じゃないから、キャラの流用そのものは著作権の侵害にはならないわ」
「お、おう、そうなのか?」
「漫画とかのビジュアルなキャラの場合は、そのキャラそのものを模写すると、そのビジュアルの表現に依拠したとして
著作権侵害を構成する場合があるから、ちょっと事情が違うけど、文章で表現されているキャラを援用しても、表現に
依拠しているとは言えないわね。だから、基本的には大丈夫」
「じゃ、どんな場合でもキャラを流用しての二次創作は大丈夫なのか?」
「どうかしら、判例によって基準がまちまちで判断は難しいけど、パロディということになると、場合によっては侵害になるから、要注意かもね。確実なのは、夏目漱石の『明暗』の続編である『続明暗』みたいな、本編後の続編は、他者が原作者に断りなく書いたものでも侵害にならないことがはっきりしているわね」
「なんだ、文学上のキャラってその程度の扱いなんだ…」
「よくある誤解は、文章で人物像が共通しているのであれば、キャラクターが利用されているのだから、著作権の侵害だというものね。しかし、文字による表現の場合、読み手が思い浮かべるキャラクターのイメージは読み手の過去の体験を反映するため千差万別なのよね。そんな、それぞれの読者でとらえ方が違ってくるものを著作権で保護できるわけがないでしょ?」
「よく、キャラ崩壊だって、騒ぐ奴がいるけど、なんか、下らなくなってきたな」
「そうよ、所詮、文学のキャラなんて、 個々の読み手が想起するイメージに過ぎず、他者がその感覚を共有できるものではないわけ。それを崩壊しているって、騒ぐのはバカバカしいわね」
「華麗にスルーが一番だな」
「そういうことよね」
(出典:『著作権法概説 [第2版]』田村善之著
有斐閣、『著作権法』中山信弘著 有斐閣)
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