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伝えたい言葉10
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- [伝えたい言葉(10)]
「高須君が買い物してる間に買って来たんだ」
起き上がり、川嶋から駅前にあるドラッグストアーの名前がはいった紙袋を貰う。
「何だこれ、開けても良いのか?」
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彼女が小さく首を縦に振って肯定したのを確認して口を閉じているテープは剥す。
中身に心当たりは無い………いやあるにはあるんだが、まさか…な。
「お、う…」
中から出て来たのは板チョコサイズの箱だった。
白地に鮮やかな文字……そして36個入り…と。
まさかのまさかで予想は当たった訳だ。
これってコンドーム…だよな?
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「あ〜…。ほら毎回、何も対策無しはアレでしょ?
高須君も気になるだろうし」
と、頬を人差し指で軽く掻きながら川嶋が照れた様子で言った。
「ま、まあ、確かに…」
俺はそう返しながら箱を食い入る様に見ていた。
昨日までは成り行きで…みたいな感じだった。
行為の直前に一瞬だけ避妊の事は頭を過ぎったが、深く考える余裕は無かった。
だが、今考えると結構危ない事をしていたんだな…と思う。
万が一の事があって一番傷付くのは彼女なのだから。
こういうのを一人で買うのは恥かしかっただろう、本来なら俺が買っておくべきだった。
- 年頃の女の子、それで無くても川嶋は人の視線を引き付ける。
綺麗だし、スタイルも良い。
同じ位の年の同性の中で有名人…売れっ子モデルだから。
こういう物を買っている姿を見られるのはマズいだろう。
申し訳無い気持ちになってくる
だが彼女の気遣いが嬉しいのも事実で…。
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「川嶋ありがとう」
その気持ちに謝って返すのは失礼だ。
だから俺は『ありがとう』と紡ぐ。
「うん。これで気兼ね無く出来るね、…高須君と最後まで繋がっていたいし…、あ」
そう言った川嶋が可愛くて俺は手を引いて抱き寄せる。
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「俺も川嶋と…」
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『繋がっていたい』
- その一言は最後まで言わせては貰えなかった。
何故なら彼女が唇を重ねてきたから…。
戯れる様に、啄む様に、優しく口付けされた後、しばらく見詰め合っていたら川嶋が俺から避妊具をひったくる。
「んふっ…高須君、亜美ちゃんに見とれて"大事"な事を忘れているし」
と微笑みながら手早くビニールを剥ぎ、中から一つ小箱を取り出して、更に一綴りになった避妊具を引っ張り出した。
「コレ、着け方分かる?」
川嶋が一つ避妊具を切り離し、人差し指と中指で挟んで聞いてくる。
- 「いや…何となくしか」
『今まで使う相手が居なかったしな…』
それは心の中で呟いておく。
やっぱりコレは一度でも装着をミスると再使用不可なのだろうか?
おお…それはいかん。
一つでも無駄にしたらMOTTAINAI、だから逆に俺からも聞いてみる事にする。
「川嶋は知ってるか?」
と…『知ってるわけないじゃん』という返事を頭の中で想像しつつ。
「知ってるよ」
「だよなぁ…って、おぅ!?」
だが返って来た言葉は予想外で俺は驚きの声を洩らす。
『何故に知ってるんだ』
率直にそう思った。
まさか…その、使った事あるのか?
『俺だけ』だと思っていたけど…違うのか?
いや確かに『初めて』は俺が……じゃあ海外に仕事に行っている時に…。
等々、グルグルと頭の中で様々な考えを過ぎらせていると川嶋が噴出す。
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「ぷっ…、高須君…今、変な事考えてたでしょ?」
ニヤニヤ笑いながら、川嶋がグイッと顔を近付ける。
「例えばぁ…亜美ちゃんが他の男の子と"コレ"使った事ある、とか」
斜め下から覗き込む様に彼女が呟く言葉。
まるで俺の考えを見透かしているかの様に言い当てた。
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「う…もしかして…マジなのか?」
- 「ふふっ…どうだろうね?亜美ちゃんって超絶可愛いしぃ」
図星を突かれたうえに、川嶋の言った事に俺の心は掻き乱される。
俺しか知る者が居ない川嶋を知ってしまった奴が居るのでは無いかと…。
思わせぶりな言い方に不安が募る。言い様のない苛つきも…。
「……………う・そ」
「おぅっ!?」
だけど、その不安と苛つきは一瞬で吹き飛ばされて霧散する。鼻っ面に食らったでこピンと共に…。
「保健体育の授業で習ったの。うふふ…高須君ってば面白い〜。
顔が赤くなったり黄色くなったり…最後には青くなって…信号みたいだったぁ」
含み笑いで川嶋が俺に対してそう言う。
…からかわれた。
シャレにならねぇ…。心臓に悪い。
だが…
「…私は"高須君だけ"だから」
川嶋が眉を僅かに下げ、消え入りそうな声
- で呟く。
「少しだけ疑っちまった。川嶋、悪かった…」
そう。川嶋からしたら『普段と同じく』からかってみただけ。
そうしたら俺があらぬ事を考えたのだ。
今、一番信じたいヒトを疑ってしまった…。
その事が腹立たしい。
「謝るよりさ…行動で示してよ」
確かに俺達はまだ『恋人未満友達以上』だけど心は繋がっている。
互いに信じないと壊れてしまう。
- どんな些細な事でも…。
綱渡りをしている様な危うい関係なのかもしれない。
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「ん…」
だから一緒に手を繋いで渡れば良い。
俺が川嶋を引っ張ってやる。
謝罪より行動…そう言う彼女に俺は口付けで示す。
先程、川嶋がしてくれた様に啄む。
一回、二回…唇で戯れ合う。
「…ん、ありがとう高須君」
俺が唇を離すと川嶋が微笑んで紡ぐ。
彼女が俺で『遊ぶ』のは今に始まった事ではない。
だから気にしないでおこう。
「川嶋…しようぜ」
「ん。じゃあ着けてあげるね」
俺に見せ付ける様に川嶋が、包装を唇で破りピンクの薄膜を摘む。
そして先の突起を指先で摘み、息子にあてがう。
彼女の白く細い指が、ゆっくりゆっくり息子の先から薄膜を被せていく。
巻かれたゴムが下がっていく毎に微かに加わる圧迫感。
たまに引っ掛かったり、巻き込んだり…でも確実に覆われていく。
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「高須君…乗っていい?」
根元まで被せられ、続いて彼女がそう聞いてくる。
「おぅ。川嶋…来いよ」
そう言うと、胡座をかいた俺の膝の上に彼女が跨がる。
首の後ろに左手を回し、右手で息子を持って…。
「ん…う。ん、ん…んあ…」
- 冷たい外気に晒されていた息子が熱くて狭い彼女の体内に呑まれていく。
柔らかい膣肉に息子が搾られながら揉まれる。
それは彼女の呼吸に合わせて僅かにだし、薄いゴム越しだけど…確かに感じる。
そして汗ばんだ身体が密着し、腕が、足が俺に絡み付く…。
「ふ…う、あ…んん。ふっあ…」
根元まで挿入り、奥まで貫き終えると、
甘く切ない喘ぎを洩らしながら、彼女が強く俺を抱き締める。
胸板に押し潰された柔らかい胸、そこからトクントクンと伝わる川嶋の鼓動。
暖くて…熱い。
俺は彼女の背中に両手を回して抱き寄せた。
腰に回された足がグッと強く巻き付き、俺達は限界まで密着する。
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「ね、ぇ重くないか…な?ふ…、うんんっ」
「川嶋は重くなんかねぇ、すげぇ軽いし」
そう。川嶋の体重は軽い。
でも妙に抱き心地は良い。
無駄な贅肉が付いている訳では無いのに、なんでだろうな?
「あは…だよねぇ。亜美ちゃん超痩せてるし…、ん…高須君」
冗談めいた口調で川嶋が微笑みと共に返して、頬を寄せる。
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「凄く暖かい。身体がポカポカしてる…」
耳元でそう呟かれ、俺は彼女と同様に囁く。
「川嶋、お前の方が暖けぇよ」
- 俺は腰を緩やかに前後させる。
息子の頭に絡み付くザラザラした膣肉。何も着けて無い時より僅かに感覚が薄い。
でも…やっぱり気持ち良いんだ。
ゾクゾクと背中を走る快感の電流に溶かされそうになる。
「あ…ふ。たかす…くぅん、奥ぅグリグリしちゃ…ひうっ」
川嶋がビクッと跳ねる。そう、彼女にとっては奥を抉られている感覚なのだろう。
彼女も円を描く様に腰を動かし、刺激を求め始める。
「はあ…、あ…あ。堪らない…よぅ。あぁ…あ」
柔らかい肉が密着して擦れ、纏わりついてくる。
その気持ち良さに腰が溶けてしまいそうになる。
「んくぅ!は…ぁん、はっ…はっ」
甘ったるい川嶋の匂いと…生々しい雌の匂い。
それらが鼻をくすぐり、布団が身体と擦れる音と川嶋の浅い呼吸、切ない啼き声が耳元で聞こえる。
押せば柔らかく弾き返して、吸い付くきめ細かな白い肌。
膣肉で締め付けられ、彼女の体重が掛かって奥深くで揉まれ、快感が連続して打ち寄せてくる。
キシキシと微かにベッドの軋み音が増していくのは、川嶋がカクカクと腰を小刻みに擦り付けているから。
横目で見てみると、トロンとした瞳で気持ち良さそうに俺を貪っていた。
- 「ふっ!う…んん、あ!あ…ひっ!あっ!」
しがみつく力が強まっていき、ピッタリと寄せられた腰同士がぶつかる。
息子の先にグリグリと擦り付けられる膣の奥の弾力のある部分。
柔らかいけどコリコリしていて、擦れるとゾワゾワと総毛立つ感覚に襲われる。
息子の頭の下辺りに絡み付くザラザラした膣肉、それは舌が這いずり回るのにも似た強い刺激。
「っあ!……あっ!!あっ、うっ、あっ!!!あは…ぁっ!!」
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もっと強い刺激が欲しい、川嶋の可愛い姿も見たい、だから俺の手は背中から尻へ滑っていく。
柔らかい尻を下から鷲掴みにして強く突き上げる。
すると彼女が身体を跳ねさせ、白い首を反らせる。
俺はその首筋に顔を埋めて甘える…鼻先をグリグリと押し当てて。
「くふぅっ!あ…、たかす、くぅんっ!はっ…あ、あっあぁ!!」
柔らかい膣肉を掻き分けて突進む快感、引き抜くと腰が蕩けてしまいそうな浮遊感。
膣壁がピッタリ吸い付き、彼女が悦ぶ毎に揉まれて搾られる。
その堪らない刺激、気を抜くと今にも達してしまいそうになる。
だからか俺は無意識に川嶋の喉元に吸い付いてしまう。
- 獣が交わる様に激しく腰を打ち付け、強く吸い付いて彼女の身体に俺の想いと質量を刻む。
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「ひあぁっ!あっ!あふぅっ!!や…あ、あぁっ!!たかすくぅんっ!!たかすくぅん!!」
彼女が俺の頭を強く抱き締めて躍る。
川嶋と俺は溶け合っていく。
互いに身体がほてり、汗だくになって触れ合う部分がジンジンと疼く。
「ふ…、う。ん…あぅ♪……あっ!!あっ!!」
だけどまだ足りない。
まだ見ていない『川嶋』は沢山ある。
見せてくれるよな?
そんな欲求が俺をつき動かし、繋がったまま彼女の身体を動かして四つん這いにさせる。
向かい合った姿勢から後背に変わる際、彼女がブルッと大きく身体を震わせて悦んだ声で呻く。
そのまま俺は彼女に覆い被さって、シーツを掴む手に指を絡ませて握る。
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「か、わしまぁっ、くぅ…身体、痛くないか…、ふっ!!」
ガツガツと柔らかい尻に腰を打ち付けながら川嶋に問い掛ける。
上体をシーツにベタッと付け、尻を突き上げた体勢の川嶋が蕩けた表情で紡ぐ。
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「う、うぅんっ!!い、いいよぅ!!たかすくぅんがぁ…あみちゃんの奥に当たってるぅ!!ひあっ!!」
と…。
- 問い掛けた内容とは違う答だけど川嶋は相当気持ち良いらしく、舌足らずな甘えた声で啼いている。
「んうっ!んあ、ぁあっ…あんっ!!あっ…く、うぅんっ!!」
桜色に染まり、憂いを帯びた川嶋の甘い発情した啼き声、サラサラした艶髪から香る匂い。
俺は彼女の髪に顔を押し付けて抽出の速度を速める。
敏感な息子の頭が膣壁に絡めとられて、引っ掛かりながら熱い胎内を蹂躙していく…。
腰が砕けそうな快感に全身が支配され、止まらなくなる。
「あんっ!は…あぁ!あんっ!!あんっ!!」
彼女も俺と躍る。
突き上げる動きに合わせて腰をフリフリ…そんなスケベな腰遣いで…。
恐らくは無意識にしているのだろう。
『もっと…もっとぉ』
そうおねだりする様に尻を押し付けてくる。
「あんっ!あんっ!!…ふ、ひゃあっ!?あっ…らめ…っ!!」
「お、おぅっ!?」
そんな時だった、それを見つけたのは。
それは艶髪から覗く彼女の耳…、俺は何気なしに唇で甘噛みしてみたんだ。
すると、ただでさえ締められていた膣内が更にキュウ〜って…。
一瞬、腰から力が抜けてしまい、その強烈な『味』に達してしまいそうになる。
- そして…俺は夢中で彼女の耳をねぶる。
あの堪らない痺れの虜になってしまって…。
「ひ…っあっ!!あ…ふっ!!た、たたかすくぅんっ!!らめぇ…あみちゃん蕩けちゃうようぅ!!」
耳の形に沿って、舌先でチロチロと小刻みに舐めると川嶋が震え、膣内も呼応して震えて締まっていく。
熱い愛液を湛えた柔らかい膣壁が息子を縦横無尽に…まるで形を確かめるかの様に蠢く。
それに加えて、膣の奥の方はザラザラしていて…おぅ、そうだな『カズノコ』みたいな感じ。
言葉で言い表すのは難しい、しいて言うなら夢見心地で翔んでいる気持ちだ。
「か、噛んじゃ…あっ!!あ、あっ…ひうぅ!!」
犬歯で何度も甘噛みしながら、ねっとり緩慢な舌遣いで責める。
息子を根元まで深く挿入て、円を描く様に掻き回すと彼女が俺の手を力強く握り返す。
そして乱れきって、熱に浮かされた川嶋がガクガクと腰を震わせるんだ。
もう堪らない…。その仕草が可愛く、それでいて健気で…。
「っ!う…あ…っっ!!…は…っあ…はあ!」
その事で感きわまったんだと思う。
突然襲って来た腰がムズムズする感覚。
絶え切れずに俺は射精してしまう。
- 「んっ!あ…はぁ…!…はぁ…あっ…あうぅ」
川嶋が身体を震わせて浅く息をしている。
その様を俺は彼女に覆い被さったまま、何処か遠くから見ている様な…不思議な感覚に陥る。
激しく脈動し、避妊具の中に吐き出される精液が纏わりつく。
その違和感と熱く痺れた思考が耳鳴りを伴いながら醒めていく。
「ん…あ…、おち、んちん…ビクンビクンして…る。んんっ……」
浅い呼吸で途切れ途切れに川嶋がそう呟く。
ポーッと蕩けた笑みを浮かべ、嬉しそうに…。
そんな彼女の呼吸に合わせて…膣肉が…ヒダがウネウネと蠢く快感。
最後の一滴まで搾り取られそうな…強い刺激。
射精が終わり、痛みにも似たジンジンとする疼きが敏感になった息子を包む。
その…ゴム着けてもコレなんだよな?
じゃあ…着けずにしたら…。
とか考えてしまい、俺は我に返る。
それは……もっと先だ。俺達は『子供』だからまだ無理。
と…。
自身の中で生まれそうになる欲望を必死で抑えて、俺は川嶋をしっかりと抱く。
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事後、俺達は無言のままベッドの上で壁にもたれ掛かっていた。
何も纏わず、膝を抱えて…でも『気まずい』とか『余所余所しい』わけではない。
- 何だか照れるんだよな。
初めてな訳では無いのに…初めてした様な気持ち。
だからか、事後の甘い語りやスキンシップも出来なくて…。
そんな時だった、川嶋が俺の身体に寄り添ってきたのだ。
「…高須君…寒い」
そう一言だけ紡いで、再び押し黙る。
「おぅ…。だったらこうすれば寒く無いだろ?」
俺は掛布団を彼女と纏って肩に手を回す。
ちょっと馴々しいかもしれない。
だけど…こうしていたい。
「うん。…あのさ、変な事言うけど」
そう川嶋が言って俺の手を握る。
「…二年生が終わるのって、あと三か月も無いんだよね」
「おぅ。そうだな」
その問い掛けの意味が分からず、俺はひとまず頷いて彼女の出方を待つ。
「色んな"関係"とか"しがらみ"を纏めるのに、それだけしか無いんだな…って。
私、高須君に"考えろ"とか言っちゃったけど、自分も考えなくちゃいけないんだよね」
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そう言われて俺は首を傾げる。
俺はともかく、川嶋も考えなくてはいけない事があるのか?
と…。
この流れからして、俺や川嶋…周りを取り巻く人間関係を含めて…の話だと思う。
だからこそ疑問に思うんだ。
- 「川嶋もあるのか?そういうの」
「あるよ。いっぱい…ね」
意味深に川嶋が呟いて遠くを見る。
その横顔は辛そうだ。
「大河や実乃梨ちゃんの事。もちろん高須君の事も…全部ひっくるめて考えなくちゃ…」
深く溜息をついた後、川嶋が身を乗り出して俺の瞳を見詰める。
「…それが全部、片が着いて…その時、高須君が、まだ私の事……想ってくれていたら……」
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川嶋が俺の膝に置いた手に僅かに力を込め、小さな声で続ける。
「また……高須君に告白させて……欲しいな」
そう言った彼女は不安そうで、でも決意を秘めたまなざしをしていた。
「………っ」
その真直ぐ俺に向けられた瞳に魅入られて、息を呑んでしまう。
「高須君は焦らずに考えていて欲しいんだ。でも私は…」
そう言って彼女はコンドームの箱を手に取って再び口を開く。
「コレ……が無くなるまでに"絡まった糸"を結び直して来るよ」
『絡まった糸』が何なのか…ハッキリとは分からない。
でも、その『糸』が綺麗に結べて、俺が考えを纏めたら、俺達は…。
「…分かった。なら俺は焦らずに…考える。…お前と一緒に」
- 「でも、その"糸"って奴を結び直すのは川嶋と俺じゃ出来ないのか?」
「…高須君が手を出したら、もっと絡まっちゃう。だからそれは亜美ちゃんに任せてよ」
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優しい笑みで川嶋がそう紡いで、俺の身体に抱き付く。
「…それって凄く難しくて辛い事なんだ。だから…少しで良いから頑張れる勇気を…頂戴?」
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川嶋が俺を見上げて顔を近付けていく…。俺達の影が重なって唇が触れて、数秒後には離れる。
川嶋と居るだけで、こんなに心が満たされて、癒されて、もっと見てみたくなる。
触れて、重なっても…それでも全部は見れない。
何故なら俺達はまだ恋人にはなれなくて、まだ少し時間が掛かる。
だけどいつかは全部、見れる。
一年間持ち続けた櫛枝への『想い』を完全に断ち切れたならば。
そして、何の迷いも無く川嶋に言ってやるんだ。
『川嶋、お前の事を誰よりも愛している』
と…。
そう。
それが俺が川嶋亜美に
『伝えたい言葉』
終わり
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